樹下神社

滋賀県守山市今浜町

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毎年、旧暦2月24日には「硫黄夜祭」が的張行事、湯立ての舞の奉納とともに斎行され、「おまんさん」の民話として長く伝えられている。

また、「比良の八荒あれじまい」と、春を告げる特殊祭でもある。

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民話「おまんさん」と硫黄夜祭

むかし、湖西の比良村に八荒という力士がいました。あるとき、湖東の鏡村で相撲が行われ、各地から力士たちが集まってきました。その

なかでとりわけ容貌がよく体もりっぱで強そうな力士がいました。八荒です。鏡村には、お満(おまん)という美しい娘がいました。年ごろの

お満は、八荒を一目見るなり心を引かれました。それぞれ力士が郷土に帰ろうとしました。お満はどうしても恋心をおさえることができませ

ん。とうとう、「およめさんにしてください。」とたのみました。すると、八荒は「それほど私を思う心があれば、百日通い通したらよめにしてや

ってもよい。」と言いました。この難問題で、おそらく娘は恋をあきらめるだろうと思ったからです。ところが、お満の恋心はますます高まっ

思いとどまることにはなりませんでした。お満は人目を忍んで、毎夜、今浜(美崎)の燈籠崎(とうろうざき)より、たらいに乗り、杓子で水を

かいて湖上を白髭明神の明りをめあてにして、八荒のもとに通いました。あまりのことに八荒は、ある夜、「どうして毎夜遠路の湖上を来る

のか。」とたずねました。すると娘は、「白髭明神の明りをめあてに通うのです。」と答えました。八荒はその大胆さに驚くとともに、一念の

ろしさを思い浮かべました。そして、九十九夜には明神さんの灯明を消しておきました。お満は、それとも知らず、いつものとおりたらいに乗

って湖上にこぎ出してしまいました。しかし、灯明が見えないため方向がわからず湖上をさまよっていました。すると、にわかに暴風が吹き

起こり、ものすごい大波にもまれ、たらいはひっくり返り、お満は湖の底にしずんでしましました。九十九夜の恋もはかない最後をとげたの

でした。この大風は数日止まず、今浜の人が湖岸に来ると、お満の乗っていたたらいはこわれて浜にうちあげられていました。村の人たち

この木片を拾い細く割って硫黄(青い火でもえる)をつけ「燈籠の灯を消さないようにしよう」と言い、娘の心をあわれんで、この硫黄を神

供えて慰めました。すると、この大風は止んだと言われています。あわれなお満の霊をなぐさるため、湖岸に燈籠が建てられ、これに

燈籠と名がつけられたのです。                                                            .

 

今浜の樹下神社では、毎年旧暦二月二十四日に硫黄夜祭が行われます。氏子年老次第十人講連中が硫黄の的を作って樹下神社

へ献上します。この的は、たらいに蛇体ととなった女の姿を苧麻(からむし)で作り、これに御幣をつけたものです。三月下旬になると、強い

風が吹き、琵琶湖が荒れて寒い日があります。人々は、この気象状態を「比良の八荒」と言います。「比良の八荒、荒れじまい」とか「比良

八荒がすむと春が来る」とか言って、季節の変わり目を感じるのです。                                      .

 〜「ふるさと守山めぐり」より〜

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村の鎮守さま 樹下神社

万葉集を携えて

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