佐久奈度神社

大津市大石中町

佐久奈度神社は大石村大字東に鎮座す。祀る所天瀬織津比賣尊、天速秋津比賣尊、天伊吹戸主尊なり。

天智天皇八年大津宮より右大臣中臣金連を勅使として八張口に於て修祓せし地に神殿を創祀せし所なり。

一説に佐久奈度神は水分の神なりといふ。

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境内社 (左)焼鎌神社 (右)敏鎌神社

境内社 (左)八幡神社 (右)稲荷神社

神社境内の下を瀬田川が流れる。向うに見える橋は、鹿跳橋。

弘法大師が白い牡鹿の背に乗ってこの川を飛び越え、立木観音に到ったから鹿跳橋だ。

昭和39年、下流に天ヶ瀬ダムが出来、神社の旧境内地は水没したため、現在の高台に移ったという。

また、川の上流には南郷洗堰があって、瀬田川の水量を制御しているから、激しい流れの川ではなくなった。

今なら鹿の世話にならなくても川は渡れる。

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ダムや堰のなかった昔、

『蜻蛉日記』に、作者の道綱母が石山寺に詣でたときの件があって、

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をのこどもの中には、「これよりいと近かなり。いざ、佐久奈谷見には出でむ」、「口引きすごすと聞くぞ、からかなるや」など

いふを聞くに、さて心にもあらず引かれいなばやと思ふ。

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供の男たちのひとりが、「石山寺からそう遠くないところに、佐久奈谷があるという。ちょっと見にいかないか」というと、

「恐ろしや、谷の口から冥土に吸い込まれてしまうと聞くぞ。それじゃかなわんなあ」、など言い合う。

そんな会話をそれとなく聞いていると、私自身が冥土に引き込まれてしまいたいと思ってしまう・・・。

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佐久奈谷とは、この神社のある辺りのことで、冥土に引き込まれるほどの激しい流れの川であったようだ。

今はこんなに、穏やかに。

村の鎮守さま 佐久奈度神社

万葉集を携えて

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