船岡山・万葉の森 滋賀県東近江市市辺町

あかね(アカネ)

あかねさす 紫野行き 標野行き

 野守は見ずや 君が袖振る

巻1−20

むらさき(ムラサキ)

紫草の にほへる妹を 憎くあらば

 人妻ゆゑに 我れ恋ひめやも

巻1−21

つばき(ツバキ)

巨勢山の つらつら椿 つらつらに

 見つつ偲はな 巨勢の春野を

巻1−54

はり(ハンノキ)

引馬野に にほふ榛原 入り乱

衣にほはせ 旅のしるしに

巻1−57

あし(アシ)

葦辺行く 鴨の羽がひに 霜降りて

 寒き夕は 大和し思ほゆ巻

1−64

やまたづ(ニワトコ)

君が行き 日長くなりぬ 山たづの

 迎へを行かむ 待つには待たじ

巻2−90

さなかづら(サネカズラ)

玉櫛笥 みもろの山の さな葛

 さ寝ずはつひに 有りかつましじ

巻2−94

まゆみ(マユミ)

み薦刈る 信濃の真弓 我が引かば

 貴人さびて いなと言はむかも

巻2−96

ゆづるは(ユズリハ)

いにしへに 恋ふる鳥かも 弓弦葉の

 御井の上より 鳴き渡り行く

巻2−111

たちばな(タチバナ)

橘の 蔭踏む道の 八衢に

 物をぞ思ふ 妹に逢はずして

巻2−125

ささ(ササ)

笹の葉は み山もさやに さやけども

 我れは妹思ふ 別れ来ぬれば

巻2−133

しひ(シイ)

家なれば 笥に盛る飯を 草枕

 旅にしあれば 椎の葉に盛る

巻2−142

ささやまぶき(ヤマブキ)

山吹の 立ちよそひたる 山清水

 汲みに行かめど 道の知らなく

巻2−158

つつじ(ツツジ)

水伝ふ 磯の浦みの 岩つつじ

 茂く咲く道を またも見むかも

巻2−185

うはぎ(ヨメナ)

妻もあらば 摘みて食げまし 沙弥の山

 野の上のうはぎ 過ぎにけらずや

巻2−221

つばな(チガヤ)

浅茅原 つばらつばらに もの思へば

 古りにし里し 思ほゆるかも

巻3−333

さかき(ヒサカキ)

奥山の 賢木の枝に しらか付け

 木綿取り付けて・・・

巻3−379

あは(アワ)

ちはやぶる 神の社し なかりせば

 春日の野辺に 粟蒔かましを

巻3−404

むし(カラムシ)

むし衾 なごやが下に 伏せれども

 妹とし寝ねば 肌し寒しも

巻4−524

はねず(ニワウメ)

思はじと 言ひてしものを はねず色の

 うつろひやすき 我が心かも

巻4−657

あふち(センダン)

妹が見し 楝の花は 散りぬべし

 我が泣く涙 いまだ干なくに

巻5−798

くり(クリ)

瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば

 まして偲はゆ・・・

巻5−802

うめ(ウメ)

我が園に 梅の花散る ひさかたの

 天より雪の 流れ来るかも

巻5−822

たく(コウゾ)

水沫なす もろき命も 栲綱の

 千尋にもがと 願ひ暮らしつ

巻5−902

ぬばたま(ヒオウギ)

ぬばたまの 夜の更けゆけば 久木生ふる

 清き川原に 千鳥しば鳴く

巻6−925

かには(ウワミズザクラ)

あぢさはふ 妹が目離れて 敷栲の

枕もまかず 桜皮巻き 作れる船に・・・

巻6−942

まつ(マツ)

一つ松 幾代か経ぬる 吹く風の

 音の清きは 年深みかも

巻6−1042

つな(テイカカズラ)

石つなの またをちかへり あをによし

 奈良の都を またも見むかも

巻6−1046

ひ(ヒノキ)

いにしへに ありけむ人も 我がごとか

 三輪の檜原に かざし折りけむ

巻7−1118

ところづら(トコロ)

すめろきの 神の宮人 ところづら

 いやとこしくに 我れかへり見む

巻7−1133

ひし(ヒシ)

君がため 浮沼の池の 菱摘むと

 我が染めし袖 濡れにけるかも

巻7−1249

かはやなぎ(ネコヤナギ)

霰降り 遠江の 吾跡川楊

 刈れども またも生ふといふ 吾跡川楊

巻7−1293

つちはり(メハジキ)

我がやどに 生ふるつちはり 心ゆも

 思はぬ人の 衣に摺らゆな

巻7−1338

ぬなは(ジュンサイ)

我が心 ゆたにたゆたに 浮蒪

 辺にも沖にも 寄りかつましじ

巻7−1352

かつら(カツラ)

向つ峰の 若桂の木 下枝取り

 花待つい間に 嘆きつるかも

巻7−1359

からあゐ(ケイトウ)

秋さらば 移しもせむと 我が蒔きし

 韓藍の花を 誰れか摘みけむ

巻7−1362

わらび(ワラビ)

石走る 垂水の上の さわらびの

 萌え出づる春に なりにけるかも

巻8−1418

すみれ(スミレ)

春の野に すみれ摘みにと 来し我れぞ

 野をなつかしみ 一夜寝にける

巻8−1424

ねぶ(ネムノキ)

昼は咲き 夜は恋ひ寝る 合歓木の花

 君のみ見めや 戯奴さへに見よ

巻8−1461

あやめぐさ(ショウブ)

ほととぎす 待てど来鳴かず あやめぐさ

 玉に貫く日を いまだ遠みか

巻8−1490

ひめゆり(ヒメユリ)

夏の野の 茂みに咲ける 姫百合の

 知らえぬ恋は 苦しきものぞ

巻8−1500

はぎ(ハギ)

草枕 旅行く人も 行き触れば

 にほひぬべくも 咲ける萩かも

巻8−1532

ふぢばかま(フジバカマ)

萩の花 尾花葛花 なでしこの花

 をみなへし また藤袴 朝顔の花

巻8−1538

かへるて(カエデ)

我がやどに もみつかへるて 見るごとに

 妹を懸けつつ 恋ひぬ日はなし

巻8−1623

ときじきふぢ(ナツフジ)

我がやどの ときじき藤の めづらしく

 今も見てしか 妹が笑まひを

巻8−1627

かほばな(ヒルガオ)

高円の 野辺のかほ花 面影に

 見えつつ妹は 忘れかねつも

巻8−1630

やまあゐ(ヤマアイ)

紅の 赤裳裾引き 山藍もち

 摺れる衣着て ただひとり・・・

巻9−1742

つげ(ツゲ)

君なくは なぞ身装はむ 櫛笥なる

 黄楊の小櫛も 取らむとも思はず

巻9−1777

やなぎ(シダレヤナギ)

うち靡く 春立ちぬらし 我が門の

 柳の末に うぐひす鳴きつ

巻10−1819

さきくさ(ミツマタ)

春されば まづさきくさの 幸くあらば

 後にも逢はむ な恋ひそ我妹

巻10−1895

あしび(アセビ)

我が背子に 我が恋ふらくは 奥山の

 馬酔木の花の 今盛りなり

巻10−1903

くず(クズ)

真葛原 靡く秋風 吹くごとに

 阿太の大野の 萩の花散る

巻10−2096

あさがほ(ムクゲ)

朝顔は 朝露負ひて 咲くといへど

 夕影にこそ 咲きまさりけれ

巻10−2104

はぎ(ハギ)

秋萩の 枝もとををに 露霜置き

 寒くも時は なりにけるかも

巻10−2170

なし(ナシ)

露霜の 寒き夕の 秋風に

 もみちにけらし 妻梨の木は

巻10−2189

おもひぐさ(ナンバンギセル)

道の辺の 尾花が下の 思ひ草

 今さらに何 物か思はむ

巻10−2270

あさがほ(キキョウ)

こいまろび 恋ひは死ぬとも いちしろく

 色には出でじ 朝顔の花

巻10−2274

つきくさ(ツユクサ)

朝咲き 夕は消ぬる 月草の

 消ぬべき恋も 我れはするかも

巻10−2291

しらかし(シラカシ)

あしひきの 山道も知らず 白橿の

 枝もとををに 雪の降れれば

巻10−2315

つき(ケヤキ)

泊瀬の 斎槻が下に 我が隠せる妻

 あかねさし 照れる月夜に 人見てむかも

巻11−2353

しりくさ(サンカクイ)

港葦に 交れる草の しり草の

 人皆知りぬ 我が下思ひは

巻11−2468

いちし(ヒガンバナ)

道の辺の いちしの花の いちしろく

 人皆知りぬ 我が恋妻は

巻11−2480

くれない(ベニバナ)

立ちて思ひ 居てもぞ思ふ 紅の

 赤裳裾引き いにし姿を

巻11−2550

たで(タデ)

我がやどの 穂蓼古幹 摘み生し

 実になるまでに 君をし待たむ

巻11−2759

わすれぐさ(ヤブカンゾウ)

忘れ草 我が紐に付く 時となく

 思ひわたれば 生けりともなし

巻12−3060

つぎね(ヒトリシズカ)

つぎねふ 山背道を 人夫の

 馬より行くに 己夫し・・・

巻13−3314

くは(クワ)

筑波嶺の 新桑繭の 衣はあれど

 君が御衣し あやに着欲しも

巻14−3350

うけら(オケラ)

恋しけば 袖も振らむを 武蔵野の

 うけらが花の 色に出なゆめ

巻14−3376

おほゐぐさ(フトイ)

上つ毛野 伊奈良の沼の 大藺草

 外に見しよは 今こそまされ

巻14−3417

こなら(コナラ)

下つ毛野 三毳の山の こ楢のす

 まぐはし子ろは 誰が笥か持たむ

巻14−3424

つづら(ツヅラフジ)

上つ毛野 安蘇山つづら 野を広み

 延ひにしものを あぜか絶えせむ

巻14−3434

くくみら(ニラ)

伎波都久の 岡のくくみら 我れ摘めど

 籠にも満たなふ 背なと摘まさね

巻14−3444

ねつこぐさ(オキナグサ)

芝付の 御宇良崎なる ねつこ草

 相見ずあらば 我れ恋ひめやも

巻14−3508

こなぎ(コナギ)

苗代の 小水葱が花を 衣に摺り

 なるるまにまに あぜか愛しけ

巻14−3576

やますげ(ヤブラン)

愛し妹を いづち行かめと 山菅の

 そがひに寝しく 今し悔しも

巻14−3577

さくら(ヤマザクラ)

春さらば かざしにせむと 我が思ひし

 桜の花は 散りゆけるかも

巻16−3786

ひる(ノビル)

醤酢に 蒜搗き合てて 鯛願ふ

 我れにな見えそ 水葱の羮

巻16−3829

なつめ(ナツメ)

玉箒 刈り来鎌麻呂 むろの木と

 棗が本と かき掃かむため

巻16−3830

きみ(キビ)

梨棗 黍に粟つぎ 延ふ葛の

 後も逢はむと 葵花咲く

巻16−3834

はちす(ハス)

ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉に

 溜まれる水の 玉に似たる見む

巻16−3837

いちひ(イチイガシ)

この片山に 二つ立つ 櫟が本に

 梓弓 八つ手挟み・・・

巻16−3885

にれ(ニレ)

あしひきの この片山の もむ楡を

 五百枝剥ぎ垂れ・・・

巻16−3886

かきつはた(カキツバタ)

かきつはた 衣に摺り付け ますらをの

 着襲ひ猟する 月は来にけり

巻17−3921

をみなへし(オミナエシ)

をみなへし 咲きたる野辺を 行き廻り

 君を思ひ出 た廻り来ぬ

巻17−3944

すすき(ススキ)

婦負の野の すすき押しなべ 降る雪に

 宿借る今日し 悲しく思ほゆ

巻17−4016

ゆり(ヤマユリ)

油火の 光に見ゆる 我がかづら

 さ百合の花の 笑まはしきかも

巻18−4086

ちさ(エゴノキ)

ちさの花 咲ける盛りに はしきよし

 その妻の子と 朝夕に・・・

巻18−4106

つるはみ(クヌギ)

紅は うつろふものぞ 橡の

 なれにし衣に なほしかめやも

巻18−4109

なでしこ(ナデシコ)

なでしこが 花見るごとに 娘子らが

 笑まひのにほひ 思ほゆるかも

巻18−4114

もも(モモ)

春の園 紅にほふ 桃の花

 下照る道に 出で立つ娘子

巻19−4139

すもも(スモモ)

我が園の 李の花か 庭に散る

 はだれのいまだ 残りてあるかも

巻19−4140

かたかご(カタクリ)

もののふの 八十娘子らが 汲み乱ふ

 寺井の上の 堅香子の花

巻19−4143

ふぢ(フジ)

藤波の 影なす海の 底清み

 沈く石をも 玉とぞ我が見る

巻19−4199

ほほがしは(ホオノキ)

我が背子が 捧げて持てる ほほがしは

 あたかも似るか 青き蓋

巻19−4204

やまたちばな(ヤブコウジ)

この雪の 消残る時に いざ行かな

 山橘の 実の照るも見む

巻19−4226

ひかげ(ヒカゲノカズラ)

あしひきの 山下ひかげ かづらける

 上にやさらに 梅をしのはむ

巻19−4278

うまら(ノイバラ)

道の辺の 茨の末に 延ほ豆の

 からまる君を はかれか行かむ

巻20−4352

このてがしは(コノテガシワ)

千葉の野の 児手柏の ほほまれど

 あやに愛しみ 置きて誰が来ぬ

巻20−4387

あぢさゐ(アジサイ)

あぢさゐの 八重咲くごとく 八つ代にを

 いませ我が背子 見つつ偲はむ

巻20−4448

せり(セリ)

ますらをと 思へるものを 大刀佩きて

 可爾波の田居に 芹ぞ摘みける

巻20−4456

しきみ(シキミ)

奥山の しきみが花の 名のごとや

 しくしく君に 恋ひわたりなむ

巻20−4476

たまばはき(コウヤボウキ)

初春の 初子の今日の 玉箒

 手に取るからに 揺らく玉の緒

巻20−4493

     

滋賀県に戻る

inserted by FC2 system