伊予の温泉 道後温泉 愛媛県松山市道後湯之町 山部宿禰赤人、伊予の温泉に至りて作る歌一首 并せて短歌 すめろきの 神の命の 敷きいます 国のことごと 湯はしも さはにあれども 島山の 宜しき国と こごしかも 伊予の高嶺の 射狭庭の 岡に立たして 歌思ひ 辞思ほしし み湯の上の 木群を見れば 臣の木も 生ひ継ぎにけり 鳴く鳥の 声も変らず 遠き代に 神さびゆかむ 幸しところ 巻3−322 反歌 ももしきの 大宮人の 熟田津に 船乗りしけむ 年の知らなく 巻3−323 「伊予の温泉」とは、今の道後温泉で、古来名湯とされる。 『伊予国風土記』逸文には、景行天皇と皇后、仲哀天皇と神功皇后、聖徳太子、舒明天皇と皇后、斉明天皇などの行幸を記す。 ・・・ 道後温泉本館「神の湯」を訪ねた。 夏休みだから、お盆だからかたくさんの人が入浴を待っている。 私は入浴が目的ではなく、この「神の湯」の男湯の湯釜に万葉歌が刻印されているため、その写真を撮りたくてきた。 受付の女性に来訪の旨を伝えると事務所に案内された。 事務所では写真OKをもらったが、なにせ「裸の浴場」カメラは持って入れない。当然である。となると、「営業の終る11時以降にきてください」。 予定を変更し、「熟田津」の海でのんびり夕日を眺め、ホテルに戻った。 夕食いつもならビールも進むのだが、 今夜は深夜の撮影、まさか酔っ払って訪ねるわけにもいかずほどほどで切り上げ、TVで巨人戦を見ながら時間を待つ。 ・・・ ようやく客の引けた浴場に案内されたのは11時を少し回っていた。 確かに湯釜がそこにあった。だが、湯舟にはまだ湯が残り、あちこちに桶も散乱している。 それよりも湯気がもうもうとしていてカメラのレンズが曇る。カメラを通しては何も見えない。 湯気が引くのを待ってやっとの思いでこの写真を撮った。苦労した一枚である。 外に出るとまったく人の通らない静かな温泉街の深夜だった。 |
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