韓亭 からどまり 福岡市西区宮浦唐泊 筑前の国の志麻の郡の韓亭に至り、船泊りして三日を経ぬ。時に夜月の光、皎々として流照す。 たちまちにこの華に対し、旅情悽噎す。おのもおのも心緒を陳べ、いささかに裁る歌六首 大君の 遠の朝廷と 思へれど 日長くしあれば 恋ひにけるかも 巻15−3668 旅にあれど 夜は火燈し 居る我れを 闇にや妹が 恋ひつつあるらむ 巻15−3669 韓亭 能許の浦波 立たぬ日は あれども家に 恋ひぬ日はなし 巻15−3670 ぬばたまの 夜渡る月に あらませば 家なる妹に 逢ひて来ましを 巻15−3671 ひさかたの 月は照りたり 暇なく 海人の漁りは 燈し合へりみゆ 巻15−3672 風吹けば 沖つ白波 畏みと 能許の亭に あまた夜ぞ寝る 巻15−3673 唐泊から能古島 ・・・・・ 遣新羅使人たちは、筑紫の館を発って海上20`足らずの唐泊に船泊りという。まだ博多湾を出たことにもならない。 唐泊で三日を経るという。海上が荒れ出発できないのであろう。 六月に難波を発って、周防灘では暴風に会い波に漂流し、艱難を越えてようやく唐泊。 秋風が吹く。新羅は遠い。次の停泊地は引津の亭。 ・・・・・・・ 唐泊の漁民センターには、この六首の歌の万葉歌碑がある。 ・・・ 唐泊に万葉歌碑がもうひとつある。東林禅寺境内。 山門の向こうに能古島 (巻15−3670) |
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