天の香具山

奈良県橿原市南浦町

天皇、香具山に登りて望国したまふ時の御製歌

大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば

 国原は 煙立ち立つ 海原は 鴎立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島 大和の国は  巻1−2

大和三山といわれる畝傍山・耳成山・香具山だが、香具山はどうも印象薄い。

山の形状が普通の小山って感じだし、他の二山は独りドンと座った感じだからかもしれない。

だが、香具山は古代から神聖な山として畏敬されてきた山である。

天の香具山という。他の二山は「天の」とはいわない。

上記の歌は、舒明天皇の国見と歌である。

山頂に登り、煙が上がり民が安心して豊かに暮らしていますという風景に、ご満悦の天皇の歌だ。

だったら、もう少し高い山からの方がもっと広い国土を見ることができるのにと思うのだが、

国見は儀式、神聖な天の香具山だからこそその意義があるのだろう。

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晴れた休日、家内と愛犬Gooとで香具山に「国見」のために登った。

北麓にある天香山神社に参拝し、お弁当に地元で求めた柿の葉寿司を持って。

登ったといっても152b、頂上で柿の葉寿司を食べながら国見と思ったが、木々が深く生い茂り国見は出来なかった。

柿の葉寿司、鯖も美味しいがサーモンもまた美味。

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国常立神社

天香久山山頂に鎮座。俗に雨の竜王と称し、天香山竜王ともよばれた。

登り口である西麓には上記の歌の碑がある。

本居宣長が「菅笠日記」に、

この峯に竜王の社とて、ちひさきほこらのあるまへに、いと大きなる松の木の、かれて朽のこれるがたてる下に、

しばしやすみて、かれいひなどくひつつ、よもの山々里々をうち見やりたるけしき、いはんかたなくおもしろきに、

のぼりたち国見をすれば国原はなど、声おかしうて、わかき人々のうちずしたる。

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本居宣長は「かれいひ」を食いつつ国見、私は「柿の葉寿司」。

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天香山神社

天香久山北麓に鎮座。櫛真命を祀る。

『日本書紀』神武天皇の条に、夢に天神が現れ教えていわれた。

「天の香具山の社の中の土を取って、平瓦八十枚をつくり、同じくお神酒を入れるnをつくり、天神地祇をお祀りせよ。

また身を清めて行う呪詛をせよ。このようにすれば敵は自然に降伏するだろう」と。

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境内の万葉歌碑

春過ぎて 夏来るらし 白栲の 衣干したり 天の香具山  巻1−28

ひさかたの 天の香具山 この夕 霞たなびく 春立つらしも  巻10−1812

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香具山を詠う万葉歌碑

元薬師寺址  橿原市城殿町

忘れ草 我が紐に付く 香具山の 古りにし里を 忘れむがため  巻3−334

紀寺跡  明日香村小山

いにしへの ことは知らぬを 我れ見ても 久しくなりぬ 天の香具山  巻7−1096

醍醐池東堤  橿原市醍醐町

春過ぎて 夏来るらし 白栲の 衣干したり 天の香具山  巻1−28

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