耳成の池

奈良県橿原市木原町

むかし、三人の男あり。同に一人の女を娉ふ。

娘子嘆息きて曰はく、

「一人の女の身、滅やすきこと露のごとし。三人の雄の志、平しかたきこと石のごとし」といふ。

つひにすなはち、池の上を彷徨り、水底に沈み没りぬ。

時に、その壮士ども、哀頽の至りにあへず、おのもおのも所心を陳べて作る歌三首

娘子は、字を縵児といふ

耳成の 池し恨めし 我妹子が 来つつ潜かば 水は涸れなむ  巻16−3788

あしひきの 山縵の子 今日行くと 我れに告げせば 帰り来ましを  巻16−3789

あしひきの 玉縵の子 今日のごと いづれの隈を 見つつ来にけむ  巻16−3790

耳成山南麓の池畔に耳成山公園がある。子どもたちが遊び、老夫婦がベンチで休む。静かな公園である。

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むかし、この池で悲しい恋の物語があった。

三人の男に愛された乙女がいずれとも結ばれず、愛の重さに自らの命を絶った。

耳成山は見ていた。

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池畔に万葉歌碑が立つ

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