阿騎の野

奈良県宇陀市大宇陀区迫間

軽皇子、阿騎の野に宿ります時に、柿本朝臣人麻呂が作る歌

やすみしし 我が大君 高照らす 日の御子 神ながら 神さびせすと 太敷かす 都を置きて

 こもりくの 泊瀬の山は 真木立つ 荒山道を 岩が根 禁樹押しなべ 坂鳥の 朝越えまして

玉かぎる 夕さり来れば み雪降る 阿騎の大野に 旗すすき 小竹を押しなべ 草枕 旅宿りせす いにしへ思ひて

巻1−45

短歌

阿騎の野に 宿る旅人 うち靡き 寐も寝らめやも いにしへ思ふに  巻1−46

ま草刈る 荒野にはあれど 黄葉の 過ぎにし君が 形見とぞ来し  巻1−47

東の 野にかぎろひの 立つ見えて かへり見すれば 月かたぶきぬ  巻1−48

日並の 皇子の命の 馬並めて み狩立たしし 時は来向ふ  巻1−49

軽皇子(文武天皇)が阿騎野に遊猟に訪れた時の歌であるが

この野は亡き父親(草壁皇子)がかつての冬、猟を催したところだったのでその追慕の遊猟ということである。

「阿騎野」は宇陀市大宇陀区辺りと云われ、巻1−48「東の野にかきろひの立つ」があまりに有名である。

いろいろ紹介される写真集には、必ずといっていいほど黎明の阿騎野、朝焼けのちょっと前の空が赤紫を帯びる頃の阿騎野が紹介される。

「かへり見すれば月かたぶきぬ」は「月は東に日は西に」の冬空のことを云うとして、その日時さえも研究されているそうである。

・・・・・

大宇陀ツアーという、この黎明の阿騎野を撮ろうというテーマの撮影会がある。

冬空の夜明け前からカメラを構え、ほんの少し東の空が明るくなったころからシャッターを押し続けるらしい。

らしいというのは私は参加したことがない。鼻水をたらし、ホッカロンを体中に張って臨むらしい。

しかも、晴天に恵まれなければ黒い雲ばかりの写真になってしまうし、時には雪も降ろう。

プロの撮られたすばらしい写真を見ているだけで満足している。

ということで、ここでの紹介は大宇陀区迫間の整備された「かぎろひの丘」と、

中庄にある「阿騎野人麻呂公園」の人麻呂像の写真紹介でご容赦願う。

・・・・・

この歌群の歌碑が大宇陀区のあちこちにあるが、拙HPの「万葉歌碑一覧」で確認されたい。

← 次ぎへ      次ぎへ →

故地一覧へ

万葉集 万葉故地 宇陀市大宇陀 阿騎の野

万葉集を携えて

inserted by FC2 system