夢のわだ 吉野川

奈良県吉野郡吉野町宮滝

帥大伴卿が歌

我が行きは 久にはあらじ 夢のわだ 瀬にはならずて 淵にしありこそ  巻3−335

「夢のわだ」

夢のわだとは、象の小川(喜佐谷川)が吉野川に流れ出る辺りで、大きな岩に堰かれて深淵になっているところといわれる。

大宰府の長官であった大伴旅人が望郷の念を詠んだ歌であるが、

1300年経った今も、浅瀬にならず青い水をたたえた深淵のままの「夢のわだ」である。

集中にもう一首

夢のわだ 言にしありけり うつつにも 見て来るものを 思ひし思へば  巻7−1132

・・・・・

養老七年癸亥の夏の五月に、吉野の離宮に幸す時に、笠朝臣が作る歌

山高み 白木綿花に 落ちたぎつ 滝の河内は 見れど飽かぬかも  巻6−909

「滝の河内」

万葉のころはもっと水量も多く、白木綿花が飛び散るように激しい流れの吉野川だったのだろう。

だけど、大岩の間を白泡をたてながら流れる吉野川、「見れど飽きない」。

笠金村と同じ気持ちで時間を忘れてしまう。

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