鴨 山  斎藤茂吉説

島根県邑智郡美郷町湯抱

柿本朝臣人麻呂、石見の国に在りて死に臨む時に、自ら傷みて作る歌一首

鴨山の 岩根しまける 我れをかも 知らにと妹が 待ちつつあるらむ  巻2−223

柿本人麻呂は、歌聖といわれながらその生誕地から歿地まで不詳という謎の多い歌人である。

人麻呂の辞世の歌である巻2−223に云う「鴨山」に斎藤茂吉は生涯の課題として取り組んだ。

昭和5年から12年に及ぶ石見地方の探索の結果、この湯抱温泉の深山にある「鴨山」を人麻呂終焉の地とした。

写真、山桜の咲く「鴨山公園」からの鴨山、左奥に頭を出しているのが「鴨山」という。

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斎藤茂吉説を詳しく理解したわけではないが、

どうしてこんな山奥に鴨山なんだという素朴な疑問を持ちながら鴨山公園からの「鴨山」遠望していた。

辞世の歌巻2−223は「鴨山の岩根しまける」というだけでこれでは鴨山を限定できない。

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茂吉は妻依羅娘子の挽歌にヒントを得たという。

今日今日と 我が待つ君は 石川の 貝に(一に云う 谷に)交じりて ありといはずやも  巻2−224

ただに逢はば 逢ひかつましじ 石川の 雲立ち渡れ 見つつ偲はむ  巻2−225

石川とはこの地を流れる「江の川」とし、この江の川に近い峡谷に「鴨山」はあると探索を続けたという。

そして遂に実在の鴨山を見つけた。旧地名であるが、邑智郡邑智町大字湯抱小字鴨山である。

茂吉説が全くの賛同を得たわけではないが、ひとつの候補地として大切な故地である。

湯抱温泉には斎藤茂吉鴨山記念館があり、綺麗なお姉さんが詳しい説明をしてくれた。

茂吉の歌など12基の歌碑もあり、「茂吉の鴨山がある湯抱温泉」を印象付ける。

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湯抱温泉の湯元橋傍にある「鴨山 柿本人麻呂終焉地」碑、碑文中に辞世歌を刻する。

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