名高の浦 黒牛潟

和歌山県海南市

JR海南駅を降りると、そこは海南市名高町という。万葉で詠まれた「名高の浦」の名を残す。

でも、そこには海はない。

和歌浦湾の南へ続く海岸線は海南市辺りで大きくその姿を変える。

関西電力の火力発電所・住友金属の鉄塔。さらには現在市の中心街となっている駅前商店街・市役所等の官庁。そして石油精製の大きなタンク。

これらはすべて海を埋め立てた干拓地に建つ。

万葉の頃の海はもうない。

近年干拓前までこの辺りを黒江湾といった。黒江の名も今に残るが、ここが万葉で歌われた「黒牛潟」である。

海南の人々にとって、万葉集に詠まれたこの地の懐古の情はとても深い。万葉歌碑が多く立つ。

でももう遅い、海は帰らない。

・・・・・

万葉歌碑

海南市黒江・中言神社

いにしへに 妹と我が見し ぬばたまの 黒牛潟を 見れば寂しも  巻9−1798

古家丹 妹等吾見 黒玉之 久漏牛方乎 見佐府下

海南市黒江・名手酒造駐車場

黒牛潟 潮干の浦を 紅の 玉藻裾引き 行くは誰が妻  巻9−1672

黒牛方 塩干乃浦乎 紅 玉裙須蘇延 徃者誰妻

海南市名高・海南駅前

紫の 名高の浦の 靡き藻の 心は妹に 寄りにしものを  巻11−2780

紫之 名高乃浦之 靡藻之 情者妹尓 因西鬼乎

海南市名高・海南駅南交差点

紀伊の海の 名高の浦に 寄する波 音高きかも 逢はぬ子ゆゑに  巻11−2730

木海之 名高之浦尓 依浪 音高鳧 不相子故尓

海南市日方新浜・消防庁舎北側

黒牛の海 紅にほふ ももしきの 大宮人し あさりすらしも  巻7−1218

黒牛乃海 紅丹穂経 百礒城乃 大宮人四 朝入為良霜

海南市日方・市役所

紫の 名高の浦の なのりその 磯に靡かむ 時待つ我れを  巻7−1396

紫之 名高浦乃 名告藻之 於礒将靡 時待吾乎

海南市築地・国道370沿い

紫の 名高の浦の 真砂地 袖のみ触れて 寝ずかなりなむ  巻7−1392

紫之 名高浦之 愛子地 袖耳觸而 不寐香将成

← 次ぎへ      次ぎへ →

故地一覧へ

万葉集 万葉故地 和歌山 名高の浦 黒牛潟

万葉集を携えて

inserted by FC2 system