あかね

あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る  巻1−20

飯食めど うまくもあらず 行きゆけど 安くもあらず あかねさす 君が心し 忘れかねつも  巻16−3857

アカネ

アカネ科アカネ属

山野の林のふちややぶに普通に生える多年草のつる草。

根は黄赤色を帯び、古くから赤の染料(茜染め)として用いられてきた。

茎には下向きの刺があり、からみつく。花期は8〜9月。

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身近にある雑草で、染料としての関心がなければただの雑草で、小花が群がり咲くがあまり目立たない。

生命力が強く、他の草に刺で絡みつくように四方に伸びる。

万葉集に詠まれる花としての興味で写真を撮ったが、万葉集に「あかね」の植物そのものを詠った歌はない。

「あかねさす」という枕詞で、日、昼、紫、照る月夜などに明るさを強調する言葉としてかかる。

ただ一例巻16−3857に見られる「あかねさす 君が心に」という用い方には、

男の私としてはふむふむと微笑ましく頷いている。

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『万葉集』に詠まれた「あかね」は十三首

あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る  巻1−20

あかねさす 日は照らせれど ぬばたまの 夜渡る月の 隠らく惜しも  巻2−169

・・・ 御門の原に あかねさす 日のことごとと 鹿じもの い匍ひ伏しつつ ・・・  巻2−199

大伴の 見つとは言はじ あかねさし 照れる月夜に 直に逢へりとも  巻4−565

あかねさす 日並べなくに 我が恋は 吉野の川の 霧に立ちつつ  巻6−916

泊瀬の 斎槻が下に 我が隠せる妻 あかねさし 照れる月夜に 人見てむかも  巻11−2353

あかねさす 日の暮れゆけば すべをなみ 千たび嘆きて 恋ひつつぞ居る  巻12−2901

・・・ 寝らむ君ゆゑ あかねさす 昼はしみらに ぬばたまの 夜はすがらに ・・・  巻13−3270

・・・ 我が思ふ 妹にし逢はねば あかねさす 昼はしみらに ・・・  巻13−3297

あかねさす 昼は物思ひ ぬばたまの 夜はすがらに 音のみし泣かゆ  巻15−3732

飯食めど うまくもあらず 行きゆけど 安くもあらず あかねさす 君が心し 忘れかねつも  巻16−3857

・・・ あかねさす 昼はしめらに あしひきの 八つ峰飛び越え ぬばたまの ・・・  巻19−4166

あかねさす 昼は田賜びて ぬばたまの 夜のいとまに 摘める芹これ  巻20−4455

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