ち・つばな

浅茅原 つばらつばらに もの思へば 古りにし里し 思ほゆるかも  巻3−333

チガヤ

河原や畑の周囲など、日当たりのよい乾いた草地に群生する多年草。

晩春、葉に先立って花穂をつけ、のちに茎が長くのびて高さ30〜80aとなる。

白い毛を密生した花穂が一面に風にそよぐ光景は大変美しい。

若い花穂は古くからツバナと呼ばれている。

ツバナや白い根にはかすかに甘味がある。

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左の写真は琵琶湖畔で写したもの。

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『万葉集』に詠まれた「ち・つばな」は二十七首

浅茅原 つばらつばらに もの思へば 古りにし里し 思ほゆるかも  巻3−333

印南野の 浅茅押しなべ さ寝る夜の 日長くしあれば 家し偲はゆ  巻6−940

家にして 我れは恋ひなむ 印南野の 浅茅が上に 照りし月夜を  巻7−1179

山高み 夕日隠りぬ 浅茅原 後見むために 標結はましを  巻7−1342

君に似る 草と見しより 我が標めし 野山の浅茅 人な刈りそね  巻7−1347

茅花抜く 浅茅が原の つほすみれ 今盛りなり 我が恋ふらくは  巻8−1449

戯奴がため 我が手もすまに 春の野に 抜ける茅花ぞ 食して肥えませ  巻8−1460

我が君が 戯奴は恋ふらし 賜りたる 茅花を食めど いや瘠せに瘠す  巻8−1462

秋萩は 咲くべくあらし 我がやどの 浅茅が花の 散りゆくみれば  巻8−1514

今朝の朝明 雁が音寒く 聞きしなへ 野辺の浅茅ぞ 色づきにける  巻8−1540

今朝鳴きて 行きし雁が音 寒みかも この野の浅茅 色づきにける  巻8−1578

松蔭の 浅茅の上の 白雪を 消たずて置かむ ことはかもなき  巻8−1654

春日野の 浅茅が上に 思ふどち 遊ぶ今日の日 忘らえめやも  巻10−1880

秋風の 寒く吹くなへ 我がやどの 浅茅が本に こほろぎ鳴くも  巻10−2158

秋されば 置く白露に 我が門の 浅茅が末葉 色づきにけり  巻10−2186

我が門の 浅茅色づく 吉隠の 浪柴の野の 黄葉散るらし  巻10−2190

我がやどの 浅茅色づく 吉隠の 夏身の上に しぐれ降るらし  巻10−2207

八田の野の 浅茅色づく 有乳山 嶺の沫雪 寒く降るらし  巻10−2331

浅茅原 小野に標結ふ 空言を いかなりと言ひて 君をし待たむ  巻11−2466

浅茅原 刈り標さして 空言も 寄そりし君が 言をし待たむ  巻11−2755

ま葛延ふ 小野の浅茅を 心ゆも 人引かめやも 我がなけなくに  巻11−2835

春日野に 浅茅標結ひ 絶えめやと 我が思ふ人は いや遠長に  巻12−3050

浅茅原 茅生に足踏み 心ぐみ 我が思ふ子らが 家のあたり見つ  巻12−3057

浅茅原 小野に標結ふ 空言も 逢はむと聞こせ 恋のなぐさに  巻12−3063

春日野の 浅茅が原に 後れ居て 時ぞともなし 我が恋ふらくは  巻12−3196

百船の 泊つる対馬の 浅茅山 しぐれの雨に もみたひにけり  巻15−3697

天なるや ささらの小野に 茅草刈り 草刈りばかに 鶉を立つも  巻16−3887

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