ふぢ

藤波の 花は盛りに なりにけり 奈良の都を 思ほすや君  巻3−330

フジ

マメ科フジ属

山野に自生するが、

古くから庭などによく植えられ、主に棚づくりにする。

つるは長くのび、ほかの木などに右巻きに巻きつく。

4〜6月、長さ20〜90aの長い総状花序をだし、

紫色または淡紫色で長さ1.2〜2aの蝶形花を多数開く。

花序は垂れ下がり、基部の方から咲き始める。

・・・・・・・

各地にフジの名所といわれるところがある。

近くの神社でも花序が1bにもなるという見事な藤棚がある。

でも、私は山野に自生する山藤が好きだ。

人知れず咲き、散っていく風情をそっと眺めるのが好きだ。

下の写真は、滋賀県甲賀市信楽の山中で撮ったもの、山の斜面全体が藤花で覆われていた。

草津・三大神社のフジ ↓

『万葉集』に詠まれた「ふぢ」は二十六首
 
藤波の 花は盛りに なりにけり 奈良の都を 思ほすや君  巻3−330

須磨の海女の 塩焼き衣の 藤衣 間遠にしあれば いまだ着なれず  巻3−413

恋しけば 形見にせむと 我がやどに 植ゑし藤波 今咲きにけり  巻8−1471

我がやどの ときじき藤の めづらしく 今も見てしか 妹が笑まひを  巻8−1627

藤波の 咲く春の野に 延ふ葛の 下よし恋ひば 久しくもあらむ  巻10−1901

藤波の 散らまく惜しみ ほととぎす 今城の岡を 鳴きて越ゆなり   巻10−1944

春日野の 藤は散りにて 何をかも み狩の人の 折りてかざさむ  巻10−1974

ほととぎす 来鳴き響もす 岡辺なる 藤波見には 君は来じとや  巻10−1991

大君の 塩焼く海人の 藤衣 なれはすれども いやめづらしも  巻12−2971

かくしてぞ 人は死ぬとふ 藤波の ただ一目のみ 見し人ゆゑに  巻12−3075

・・・ 藤波の 思ひまつはり 若草の 思ひつきにし 君が目に ・・・  巻13−3248

春へ咲く 藤の末葉の うら安に さ寝る夜ぞなき 子ろをし思へば  巻14−3504

妹が家に 伊久里の杜の 藤の花 今来む春も 常かくし見む  巻17−3952

藤波は 咲きて散りにき 卯の花は 今ぞ盛りと あしひきの ・・・  巻17−3993

藤波の 咲きゆく見れば ほととぎす 鳴くべき時に 近づきにけり  巻18−4042

明日の日の 布勢の浦みの 藤波に けだし来鳴かず 散らしてむかも  巻18−4043

・・・ 霞たなびき 垂姫に  藤波咲きて 浜清く 白波騒き ・・・  巻19−4187

藤波の 花は盛りに かくしこそ 浦漕ぎ廻つつ 年にしのはめ  巻19−4188

・・・ 羽触れに散らす 藤波の 花なつかしみ 引き攀じて 袖に扱入れつ ・・・  巻19−4192

ほととぎす 鳴く羽触れにも 散りにけり 盛り過ぐらし 藤波の花  巻19−4193

藤波の 影なす海の 底清み 沈く石をも 玉とぞ我が見る  巻19−4199

の浦の 底さへにほふ 藤波を かざして行かむ 見ぬ人のため  巻19−4200

いささかに 思ひて来しを 多の浦に 咲ける藤見て 一夜経ぬべし  巻19−4201

藤波を 仮廬に作り 浦廻する 人とは知らに 海人とか見らむ  巻19−4202

・・・ 夕されば 藤の茂みに はろはろに 鳴くほととぎす 我がやどの ・・・  巻19−4207

藤波の 茂りは過ぎぬ あしひきの 山ほととぎす などか来鳴かぬ  巻19−4210

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