いね

秋の田の 穂向きの寄れる 片寄りに 我れは物思ふ つれなきものを  巻10−2247

いねの説明は要らないでしょう。毎日お腹いっぱいにご飯が食べられることに感謝します。

上の写真は赤米の穂です。

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『万葉集』に詠まれた「いね」は五十八首(田・穂を含む)

秋の田の 穂の上に霧らふ 朝霞 いつへの方に 我が恋やまむ  巻2−88

秋の田の 穂向きの寄れる 片寄りに 君に寄りなな 言痛くありとも  巻2−114

秋の田の 穂田の刈りばか か寄りあはば そこもか人の 我を言成さむ  巻4−512

言出しは 誰が言なるか 小山田に 苗代水の 中よどにして  巻4−776

ゆ種蒔く あらきの小田を 求めむと 足結ひ出で濡れぬ この川の瀬に  巻7−1110

住吉の 小田を刈らす子 奴かもなき 奴あれど 妹がみためと 私田刈る  巻7−1275

春日すら 田に立ち疲れ 君し悲しも 若草の 妻なき君し 田に立ち疲る  巻7−1285

石上 布留の早稲田を 秀でずとも 縄だに延へよ 守りつつ居らむ  巻7−1353

秋の田の 穂田を雁がね 暗けくに 夜のほどろにも 鳴き渡るかも  巻7−1539

秋田刈る 仮盧もいまだ 壊たねば 雁が音寒し 霜も置きぬがに  巻8−1556

ひさかたの 雨間も置かず 雲隠り 鳴きぞ行くなる 早稲田雁がね  巻8−1566

雲隠り 鳴くなる雁の 行きて居む 秋田の穂立 繁くし思ほゆ  巻8−1567

しかとあらぬ 五百代小田を 刈り乱り 田盧に居れば 都し思ほゆ  巻8−1592

妹が家の 門田を見むと うち出来し 心もしるく 照る月夜かも  巻8−1596

我が蒔ける 早稲田の穂立 作りたる かづらぞ見つつ 偲はせ我が背  巻8−1624

我妹子が 業と作れる 秋の田の 早稲穂のかづら 見れど飽かぬかも  巻8−1625

衣手に 水渋付くまで 植ゑし田を 引板我が延へ まもれる苦し  巻8−1634

佐保川の 水を堰き上げて 植ゑし田を 尼作る 刈れる初飯は ひとりなるべし 家持続ぐ  巻8−1635

巨椋の 入江響むなり 射目人の 伏見が田居に 雁渡るらし  巻9−1699

我妹子が 赤裳ひづちて 植ゑし田を 刈りて収めむ 倉無の浜  巻9−1710

・・・ 筑波嶺に 登りて見れば 尾花散る 師付の田居に 雁がねも ・・・  巻9−1757

筑波嶺の 裾みの田居に 秋田刈る 妹がり遣らむ 黄葉手折らな  巻9−1758

石上 布留の早稲田の 穂には出でず 心のうちに 恋ふるこのころ  巻9−1768

秋田刈る 仮盧の宿り にほふまで 咲ける秋萩 見れど飽かぬかも  巻10−2100

娘子らに 行き逢ひの早稲を 刈る時に なりにけらしも 萩の花咲く  巻10−2117

秋の田の 我が刈りばかの 過ぎぬれば 雁が音聞こゆ 冬かたまけて  巻10−2133

秋田刈る 仮盧を作り 我が居れば 衣手寒く 露ぞ置きにける  巻10−2174

秋田刈る 盧動くなり 白露し 置く穂田なしと 告げに来ぬらし  巻10−2176

あしひきの 山田作る子 秀でずとも 縄だに延へよ 守ると知るがね  巻10−2219

さを鹿の 妻呼ぶ山の 岡辺なる 早稲田は刈らじ 霜は降るとも  巻10−2220

我が門の 守る田を見れば 佐保の内の 秋萩すすき 思ほゆるかも  巻10−2221

恋ひつつも 稲葉かき別け 家居れば 乏しくもあらず 秋の夕風  巻10−2230

秋田刈る 旅の盧りに しぐれ降り 我が袖濡れぬ 干す人なしに  巻10−2235

住吉の 岸を田に墾り 蒔きし稲 さて刈るまでに 逢はぬ君かも  巻10−2244

大刀の後 玉纒田居に いつまでか 妹を相見ず 家恋ひ居らむ  巻10−2245

秋の田の 穂の上に置ける 白露の 消ぬべくも我は 思ほゆるかも  巻10−2246

秋の田の 穂向きの寄れる 片寄りに 我れは物思ふ つれなきものを  巻10−2247

秋田刈る 仮盧を作り 盧りして あるらむ君を 見むよしもがも  巻10−2248

鶴が音の 聞こゆる田居に 盧りして 我れ旅にありと 妹に告げこそ  巻10−2249

春霞 たなびく田居に 盧つきて 秋田刈るまで 思はしむらく  巻10−2250

橘を 守部の里の 門田早稲 刈る時過ぎぬ 来じとすらしも  巻10−2251

秋の穂を しのに押しなべ 置く露の 消かもしなまし 恋ひつつあらずは  巻10−2256

打つ田には 稗はしあまた ありといへど 選らえし我れぞ 夜をひとり寝る  巻11−2476

玉桙の 道行き疲れ 稲席 しきても君を 見むよしもがも  巻11−2643

あしひきの 山田守る翁が 置く鹿火の 下焦れのみ 我が恋ひ居らく  巻11−2649

にほ鳥の 葛飾早稲を にへすとも その愛しきに 外に立てめやも  巻14−3386

上つ毛野 佐野田の苗の 群苗に 事は定めつ 今はいかにせも  巻14−3418

稲搗けば かかる我が手を 今夜もか 殿の若子が 取りて嘆かむ  巻14−3459

おしていなと 稲は搗かねど 波の穂の いたぶらしもよ 昨夜ひとり寝て  巻14−3550

青楊の 枝伐り下ろし ゆ種蒔き ゆゆしき君に 恋ひわたるかも  巻15−3603

人の植うる 田は植ゑまさず 今さらに 国別れして 我れはいかにせむ  巻15−3746

あらき田の 鹿猪田の稲を 倉に上げて あなひねひねし 我が恋ふらくは  巻16−3848

波羅門の 作れる小田を 食む烏 瞼腫れて 幡桙に居り   巻16−3856

秋の田の 穂向き見がてり 我が背子が ふさ手折り来る をみなへしかも  巻17−3943

・・・ 雨降らず 日の重なれば 植ゑし田も 蒔きし畑も 朝ごとに 凋み枯れゆく ・・・  巻18−4122

春まけて もの悲しきに さ夜更けて 羽振き鳴く鴫 誰が田にか住む  巻19−4141

朝霧の たなびく田居に 鳴く雁を 留め得むかも 我がやどの萩  巻19−4224

大君は 神にしませば 赤駒の 腹這ふ田居を 都と成しつ  巻19−4260

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