ちち

ちちの実の 父の命 ははそ葉の 母の命 おほろかに 心尽して 思ふらむ その子なれやも・・・  巻19−4164

イヌビワ

クワ科イチジク属

山地や丘陵に生える。

小枝を傷つけると白い乳液がでる。

イチジクに似た小果をつける。

白い乳が出るから「ちち」で、父の枕詞ということだ。

それなら、イチジクだって同じように乳が出るということでこれも「ちち」であるかもしれない、という。

私の実家に昔イチジクの木があった。

木に登り、熟したイチジクの実をもぎ取り、その場で頬張ったものだ。

栗の項でもお話したが、コンビニやスーパーはなかったけれど、あちこちでおやつは調達できた。

もぎ取った手はこの白い乳でネバネバになっていた。
イチジク

イチョウ

イチョウ科イチョウ属落葉高木。

秋には美しく黄葉する。

花は4月頃咲く。種子は9月頃成熟する、外種子は黄色で悪臭がある。ぎんなんである。

私はよく田舎の神社を訪ねるが、台風の後など神社の境内にはこのギンナンがいっぱい落ちている。

少々臭いが、これを持ち帰りギンナン専用の網焼き器で焼いて塩をふりかけ食べる。酒の肴にちょうど良い。

全国の銘木の中に「乳イチョウ」とよばれる木がたくさんある。

私は滋賀県伊吹町(現米原市)の白山神社で見かけた木を紹介する。

下の写真中央、枝から二つの乳房がぶら下っている(気根というらしいが)。背丈ほどもある大きな乳房だ。

母乳がでますようにという信仰の木でもあった。

だから、万葉の「ちち」はイチョウのことといわれる。

それが父の枕詞というのも・・・。

「ボインはお父ちゃんの為にあるのではないでぇ、赤ちゃんの為にあるんやでぇ」こんな古い歌もあったけど。

いずれにしても、この乳イチョウの乳房、私の専門(ほんまの仕事・ワコール)のブラジャーはしていない。

・・・・・

『万葉集』に詠まれた「ちち」は二首

ちちの実の 父の命 ははそ葉の 母の命 おほろかに 心尽して 思ふらむ ・・・  巻19−4164

・・・ ちちの実の 父の命は 栲づのの 白ひげの上ゆ 涙垂り ・・・  巻20−4408

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