まゆみ

白真弓 石辺の山の 常盤なる 命なれやも 恋ひつつ居らむ  巻11−2444

マユミ

ニシキギ科ニシキギ属

5〜6月、本年枝の基部から長さ3〜6aの柄のある集散花序をだし、

直径約8_の淡緑色の花を開く。

刮ヤは8〜10_の四角形で、淡紅色に熟して4つに深く裂けると、

赤い仮種皮に包まれた種子が現れる。

昔、この材で弓を作ったことから真弓の名がある。

材は白く、緻密で狂いが少ない。またよくしなう。

・・・・・・・

それが源氏物語なのか他の古典なのか迂闊にも今は覚えていない。

だが、その内容は、そのころの風習として、

貴族の家に子供が誕生すると、家の隅々に強兵が立ち、

弓を引き空弓の音をびゅんびゅん鳴らして

邪気を寄せ付けないという慣わしがあったというもの。

この話がなぜか私の心の中に残り、

長女が誕生したとき、

名前を「真弓」と名付けたことで、

産院にいる母娘を想い、

自宅で水割りをちびりちびりやりながら、

長い竹串(おでん用)と糸で弓らしきものを作り、

「びゅんびゅん」鳴らしていた。

30余年前の話である。

・・・・・

『万葉集』に詠まれた「まゆみ」は十二首
 
み薦刈る 信濃の真弓 我が引かば 貴人さびて いなと言はむかも  巻2−96

み薦刈る 信濃の真弓 引かずして 弦はくるわざを 知ると言はなくに  巻2−97

天の原 振り放け見れば 白真弓 張りて懸けたり 夜道はよけむ  巻3−289

陸奥の 安達太良真弓 弦はけて 引かばか人の 我を言なさむ  巻7−1329

南淵の 細川山に 立つ檀 弓束巻くまで 人に知らえじ  巻7−1330

・・・ 焼大刀の 手かみ押しねり 白真弓 靫取り負ひて ・・・  巻9−1809

白真弓 今春山に 行く雲の 行きや別れむ 恋しきものを  巻10−1923

天の原 行きて射てむと 白真弓 引きて隠れる 月人壮士  巻10−2051

白真弓 石辺の山の 常盤なる 命なれやも 恋ひつつ居らむ  巻11−2444

葛城の 襲津彦真弓 新木にも 頼めや君が 我が名告りけむ  巻11−2639

白真弓 斐太の細江の 菅鳥の 妹に恋ふれか 寐を寝かねつる  巻12−3092

陸奥の 安達太良真弓 はじき置きて 反らしめきなば 弦はかめかも  巻14−3437

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