むらさき

あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る  巻1−20

紫草の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに 我れ恋ひめやも  巻1−21

ムラサキ

ムラサキ科ムラサキ属

野に咲く多年草で、花は小さな白色であるが、この草は根の方が有名。花期は6月〜8月。

根は太く紫色で、昔から染料や薬用として利用された。

紫は高貴な色とされる。

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五月五日は、薬草狩りをする宮廷の行事があり、額田王と大海人皇子はこの日のことを詠ったもの。

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『万葉集』に詠まれた「むらさき」は十七首

あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る  巻1−20

紫草の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに 我れ恋ひめやも  巻1−21

託馬野に 生ふる紫草 衣に染め いまだ着ずして 色に出でにけり  巻3−395

韓人の 衣染むといふ 紫の 心に染みて 思ほゆるかも  巻4−569

紫の 糸をぞ我が縒る あしひきの 山橘を 貫かむと思ひて  巻7−1340

紫の 名高の浦の 真砂地 袖のみ触れて 寝ずかなりなむ  巻7−1392

紫の 名高の浦の なのりその 磯に靡かむ 時待つ我れを  巻7−1396

紫草の 根延ふ横野の 春野には 君を懸けつつ うぐひす鳴くも  巻10−1825

紫の 名高の浦の 靡き藻の 心は妹に 寄りにしものを  巻11−2780

紫の 帯の結びも 解きもみず もとなや妹に 恋ひわたりなむ  巻12−2974

紫の 我が下紐の 色に出でず 恋ひかも痩せむ 逢ふよしをなみ  巻12−2976

紫の まだらのかづら 花やかに 今日見し人に 後恋ひむかも  巻12−2993

紫草を 草と別く別く 伏す鹿の 野はことにして 心は同じ  巻12−3099

紫は 灰さすものぞ 海石榴市の 八十の衢に 逢へる子や誰れ  巻12−3101

紫草は 根をかも終ふる 人の子の うら愛しけを 寝を終へなくに  巻14−3500

・・・ さ丹つらふ 色になつける 紫の 大綾の衣 住吉の 遠里小野の ・・・  巻16−3791

紫の 粉潟の海に 潜く鳥 玉潜き出ば 我が玉にせむ  巻16−3870

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