なでしこ

秋さらば 見つつ偲へと 妹が植ゑし やどのなでしこ 咲きにけるかも  巻3−464

カワラナデシコ

ナデシコ科ナデシコ属

山野の日当たりのよい草原や河原などに生える多年草。

茎は直立し、上部で枝分れして30〜100aになる。

淡紅紫色の可憐な花が咲く。花期 7〜10月。

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「やどのなでしこ」というように、

万葉のころからナデシコは家庭で園芸花として楽しんだようですね。

私は山登りが好きで、山野草の写真を楽しみに登るのですが、

ナデシコのちょっと異種かも知れませんが、

例えば石川県の白山の2000b辺りや

滋賀県の伊吹山や霊仙山の1000b辺りに

ナデシコを見ることができます。

園芸では味わえない自生のナデシコに心和むことがあります。

白山のなでしこ

霊仙山のなでしこ

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遣新羅使人の旅路を追って対馬を訪ねた。

韓国・釜山が見えるという北端の海岸に、ハマナデシコが咲いていた。

『万葉集』に詠まれた「なでしこ」は二十六首

なでしこが その花にもが 朝な朝な 手に取り持ちて 恋ひぬ日なけむ  巻3−408

秋さらば 見つつ偲へと 妹が植ゑし やどのなでしこ 咲きにけるかも  巻3−464

我がやどの 蒔きしなでしこ いつしかも 花に咲きなむ なそへつつ見む  巻8−1448

我がやどの なでしこの花 盛りなり 手折りて一目 見せむ子もがも  巻8−1496

なでしこは 咲きて散りぬと 人は言へど 我が標めし野の 花にあらめやも  巻8−1510

萩の花 尾花葛花 なでしこの花 をみなへし また藤袴 朝顔の花  巻8−1538

射目立てて 跡見の岡辺の なでしこの花 ふさ手折り 我れは持ちて行く 奈良人のため  巻8−1549

高円の 秋野の上の なでしこの花 うら若み 人のかざしし なでしこの花  巻8−1610

朝ごとに 我が見るやどの なでしこの 花にも君は ありこせぬかも  巻8−1616

見わたせば 向ひの野辺の なでしこの 散らまく惜しも 雨な降りそね  巻10−1970

野辺見れば なでしこの花 咲きにけり 我が待つ秋は 近づくらしも  巻10−1972

隠りのみ 恋ふれば苦し なでしこの 花に咲き出よ 朝な朝な見む  巻10−1992

・・・ 月立てば 時もかはさず なでしこが 花の盛りに 相見しめとぞ  巻17−4008

うら恋し 我が背の君は なでしこが 花にもがもな 朝な朝な見む  巻17−4010

一本の なでしこ植ゑし その心 誰れに見せむと 思ひそめけむ  巻18−4070

・・・ 心なぐさに なでしこを やどに蒔き生ほし 夏の野の ・・・  巻18−4113

なでしこが 花見るごとに 娘子らが 笑まひのにほひ 思ほゆるかも  巻18−4114

なでしこは 秋咲くものを 君が家の 雪の巌に 咲けりけるかも  巻19−4231

雪の山斎 巌に植ゑたる なでしこは 千代に咲かぬか 君がかざしに  巻19−4232

我が背子が やどのなでしこ 日並べて 雨は降れども 色も変らず  巻20−4442

ひさかたの 雨は降りしく なでしこが いや初花に 恋しき我が背  巻20−4443

我がやどに 咲けるなでしこ 賄はせむ ゆめ花散るな いやをちに咲け  巻20−4446

賄しつつ 君が生ほせる なでしこが 花のみ問はむ 君ならなくに  巻20−4447

なでしこが 花取り持ちて うつらうつら 見まくの欲しき 君にもあるかも  巻20−4449

我が背子が やどのなでしこ 散らめやも いや初花に 咲きは増すとも  巻20−4450

うるはしみ 我が思ふ君は なでしこが 花になそへて 見れど飽かぬかも  巻20−4451

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