さなかづら

木綿包み 白月山の さな葛 後もかならず 逢はむとぞ思ふ  巻12−3073

サネカズラ

モクレン科サネカズラ属別名ビナンカズラ。

山野に生える。枝には粘液が多い。葉の裏面は紫色のことが多い。

8月頃、直径約1.5aの花が垂れ下がって咲く。花弁と萼片はともに淡黄色で9〜15個。

雌花は花のあと花床が球状にふくらみ、球形の赤い果実をつける。

・・・・・・

サネカズラ、別名をビナンカズラという。

「美男葛」である。

茎を水に浸しておくとねばりのある樹液がとれる。

昔の人はこれを鬢付け油とした。いわゆる整髪料である。

だから美男カズラという。

万葉に詠まれる「さなかづら」は「後にも逢はむ」にかかる枕詞である。

サネカズラの蔓が伸びて別れてもまた後に逢うということらしい。

太宰治の「赤い糸」みたいなものかな。

『晩年』に出てくる赤い糸は、お互いの右足の小指に目に見えない赤い糸が結ばれていていつか一緒になれるというお話。

・・・・・

『万葉集』に詠まれた「さなかづら」は十首

玉櫛笥 みもろの山の さな葛 さ寝ずはつひに 有りかつましじ  巻2−94

・・・ さね葛 後も逢はむと 大船の 思ひ頼みて 玉かぎる ・・・  巻2−207

あしひきの 山さな葛 もみつまで 妹に逢はずや 我が恋ひ居らむ  巻10−2296

さね葛 後も逢はむと 夢のみに うけひわたりて 年は経につつ  巻10−2479

木綿畳 田上山の さな葛 ありさりてしも 今ならずとも  巻12−3070

丹波道の 大江の山の さな葛 絶えむの心 我が思はなくに  巻12−3071

木綿包み 白月山の さな葛 後もかならず 逢はむとぞ思ふ  巻12−3073

・・・ さな葛 後も逢はむと 慰むる 心を持ちて ・・・  巻13−3280

・・・ さな葛 後も逢はむと 大船の 思ひ頼めど うつつには ・・・  巻13−3281

大船の 思ひ頼みて さな葛 いや遠長く 我が思へる ・・・  巻13−3288

←前(ささ)へ  次(さのかた)へ

万葉の花一覧に戻る

万葉の花

万葉集を携えて

inserted by FC2 system