あふち

妹が見し 楝の花は 散りぬべし 我が泣く涙 いまだ干なくに  巻5−798

センダン

センダン科センダン属

暖地の海岸近くに自生する。街路樹や公園などによく見かける。

5〜6月、新しくのびた枝の葉腋から長さ10〜15aの複集散花序をだし、淡紫色の小さな花を多数開く。

果実は薬用にし、核は数珠の玉に使う。

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あちこちの街道沿いにこのセンダンの街路樹が咲きますと、爽やかな初夏を感じます。

この写真は京都府宇治田原町から京田辺市に向う街道沿いにありました。

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清少納言は『枕草子』に、

「木のさまにくげなれど楝の花いとをかし。かれがれにさまことに咲きて、かならず五月五日にあふもをかし。」

清少納言はあふちの花をいとをかしと表現しているから、趣のあるとか美しいと言っているのだろう。

ところが『平家物語』の時代になるとちょっと趣を変える。巻第十一に、

「大臣殿父子のかうべ都へいる。檢非違使ども、三条河原にいで向て是をうけとり、大路をわたして左の獄門の樗あふちの木にぞかけたりける。」

平宗盛親子の首が牢獄の前のあふちの木にかけられたという。この頃、晒し首は必ずあふちの木に並べられたともいう。

センダンは牢獄の晒し首の木だった。

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『万葉集』に詠まれた「あふち」は四首

妹が見し 楝の花は 散りぬべし 我が泣く涙 いまだ干なくに  巻5−798

我妹子に 楝の花は 散り過ぎず 今咲けるごと ありこせぬかも  巻10−1973

玉に貫く 楝を家に 植ゑたらば 山ほととぎす 離れず来むかも  巻17−3910

ほととぎす 楝の枝に 行きて居ば 花は散らむな 玉と見るまで  巻17−3913



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