すすき・をばな
めづらしき 君が家なる 花すすき 穂に出づる秋の 過ぐらく惜しも 巻8−1601
ススキ
平地や山地の日当たりのよい所に見られる多年草。
大きな株をつくって群生する。
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中秋の名月、
母はこのススキを数本花瓶に挿し、横には小芋が添えられて座敷の縁側に飾られていた。
うさぎが餅をついているといった話を聞いていた記憶があるが、
川原や土手にいっぱいあるススキをどうして飾るのかと思ったものだ。
今、その風情が懐かしいし、
妻がまた子供たちと同じようにススキを飾っている。
美しい日本の伝統だと思う。
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『万葉集』に詠まれた「をばな・すすき」は三十四首
・・・ み雪降る 安騎の大野に 旗すすき 小竹を押しなべ 草枕 ・・・ 巻1−45
はだすすき 久米の若子が いましける 三穂の石室は 見れど飽かぬかも 巻3−307
妹らがり 我が通ひ道の 小竹すすき 我れし通はば 靡け小竹原 巻7−1121
伊香山 野辺に咲きたる 萩見れば 君が家なる 尾花し思ほゆ 巻8−1533
萩の花 尾花葛花 なでしこの花 をみなへし また藤袴 朝顔の花 巻8−1538
秋づけば 尾花が上に 置く霜の 消ぬべくも我は 思ほゆるかも 巻8−1564
我がやどの 尾花が上の 白露を 消たずて玉に 貫くものにもが 巻8−1572
秋の野の 尾花が末を 押しなべて 来しくもしるく 逢へる君かも 巻8−1577
めづらしき 君が家なる 花すすき 穂に出づる秋の 過ぐらく惜しも 巻8−1601
はだすすき 尾花逆葺き 黒木もち 造れる室は 万代までに 巻8−1637
・・ 筑波嶺に 登りて見れば 尾花散る 師付の田居に 雁がねも ・・・ 巻9−1757
・・・ 旗すすき 本葉もそよに 秋風の 吹きくる宵に 天の川 ・・・ 巻10−2089
人皆は 萩を秋と言ふ よし我れは 尾花が末を 秋とは言はむ 巻10−2110
秋の野の 尾花が末に 鳴くもずの 声聞きけむか 片聞け我妹 巻10−2167
夕立の 雨降るごとに 春日野の 尾花が上の 白露思ほゆ 巻10−2169
我がやどの 尾花押しなべ 置く露に 手触れ我妹子 散らまくも見む 巻10−2172
我が門の 守る田を見れば 佐保の内の 秋萩すすき 思ほゆるかも 巻10−2221
秋の野の 尾花が末の 生ひ靡き 心は妹に 寄りにけるかも 巻10−2242
道の辺の 尾花が下の 思ひ草 今さらに何 物か思はむ 巻10−2270
さを鹿の 入野のすすき 初尾花 いづれの時か 妹が手まかむ 巻10−2277
我妹子に 逢坂山の はだすすき 穂には咲き出ず 恋ひわたるかも 巻10−2283
秋萩の 花野のすすき 穂には出でず 我が恋ひわたる 隠り妻はも 巻10−2285
秋津野の 尾花刈り添へ 秋萩の 花を葺かさね 君が仮盧に 巻10−2292
はだすすき 穂には咲き出ぬ 恋をぞ我がする 玉かぎる ただ一目のみ 見し人ゆゑに 巻10−2311
新室の こどきに至れば はだすすき 穂に出し君が 見えぬこのころ 巻14−3506
かの子ろと 寝ずやなりなむ はだすすき 宇良野の山に 月片寄るも 巻14−3565
帰り来て 見むと思ひし 我がやどの 秋萩すすき 散りにけむかも 巻15−3681
・・ 秋萩の 散らへる野辺の 初尾花 仮盧に葺きて 雲離れ ・・・ 巻15−3691
はだすすき 穂にはな出でそ 思ひてある 心は知らぬ 我れも寄りなむ 巻16−3800
夕立の 雨うちふれば 春日野の 尾花が末の 白露思ほゆ 巻16−3819
・・・ はだすすき 穂に出づる秋の 萩の花 にほへるやどを 朝庭に ・・・ 巻17−3957
婦負の野の すすき押しなべ 降る雪に 宿借る今日し 悲しく思ほゆ 巻17−4016
高円の 尾花吹き越す 秋風に 紐解き開けな 直ならずとも 巻20−4295
初尾花 花に見むとし 天の川 隔りにけらし 年の緒長く 巻20−4308
万葉の花