うめ

我が園に 梅の花散る ひさかたの 天より雪の 流れ来るかも  巻5−822

バラ科サクラ属

庭や畑で栽培される。花は2〜3月、葉に先立って開き、通常白色だが、紅色、淡紅色のものもある。

花弁と萼片は5個。雄しべは多数で花弁より短い。雌しべは1個で、子房に密毛がある。

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万葉人は梅の花を愛賞し、花の下で宴を開き、散る花を惜しむ。万葉集には120首ほどの梅の歌がある。

今日でも梅は桜とともに春を告げる花として愛されていて、各地それぞれに有名な梅園があるが、菅原道真に関係する神社にも梅園は多い。

道真が詠んだ「東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」の歌から天満宮には必ず梅園がある。

京都・北野天満宮、福岡・大宰府天満宮などなど。

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『万葉集』に詠まれた「うめ」は百十九首

ぬばたまの その夜の梅を た忘れて 折らず来にけり 思ひしものを  巻3−392

妹は家に 咲きたる梅の いつもいつも なりなむ時に 事は定めむ  巻3−398

妹が家に 咲きたる花の 梅の花 実にしなりなば かもかくもせむ  巻3−399

梅の花 咲きて散りぬと 人は言へど 我が標結ひし 枝にならめやも  巻3−400

我妹子が 植ゑし梅の木 見るごとに 心むせつつ 涙し流る  巻3−453

春の雨は いやしき降るに 梅の花 いまだ咲かなく いと若みかも  巻4−786

うら若み 花咲きかたき 梅を植ゑて 人の言繁み 思ひぞ我がする  巻4−788

春雨を 待つとにしあらし 我がやどの 若木の梅も いまだふふめり  巻4−792

正月立ち 春の来らば かくしこそ 梅を招きつつ 楽しき終へめ  巻5−815

梅の花 今咲けるごと 散り過ぎず 我が家の園に ありこせぬかも  巻5−816

梅の花 咲きたる園の 青柳は かづらにすべく なりにけらずや  巻5−817

春されば まづ咲くやどの 梅の花 ひとり見つつや 春日暮らさむ  巻5−818

世の中は 恋繁しゑや かくしあらば 梅の花にも ならましものを  巻5−819

梅の花 今盛りなり 思ふどち かざしにしてな 今盛りなり  巻5−820

青柳 梅との花を 折りかざし 飲みての後は 散りぬともよし  巻5−821

我が園に 梅の花散る ひさかたの 天より雪の 流れ来るかも  巻5−822

梅の花 散らくはいづく しかすがに この城の山に 雪は降りつつ  巻5−823

梅の花 散らまく惜しみ 我が園の 竹の林に うぐひす鳴くも  巻5−824

梅の花 咲きたる園の 青柳を かづらにしつつ 遊び暮らさな  巻5−825

うち靡く 春の柳と 我がやどの 梅の花とを いかにか分かむ  巻5−826

春されば 木末隠りて うぐひすぞ 鳴きて去ぬなる 梅が下枝に  巻5−827

人ごとに 折りかざしつつ 遊べども いやめづらしき 梅の花かも  巻5−828

梅の花 咲きて散りなば 桜花 継ぎて咲くべく なりにてあらずや  巻5−829

万代に 年は来経とも 梅の花 絶ゆることなく 咲きわたるべし  巻5−830

春なれば うべも咲きたる 梅の花 君を思ふと 夜寐も寝なくに  巻5−831

梅の花 折りてかざせる 諸人は 今日の間は 楽しくあるべし  巻5−832

年のはに 春の来らば かくしこそ 梅をかざして 楽しく飲まめ  巻5−833

梅の花 今盛りなり 百鳥の 声の恋しき 春来るらし  巻5−834

春さらば 逢はむと思ひし 梅の花 今日の遊びに 相見つるかも  巻5−835

梅の花 手折りかざして 遊べども 飽き足らぬ日は 今日にしありけり  巻5−836

春の野に 鳴くやうぐひす なつけむと 我が家の園に 梅が花咲く  巻5−837

梅の花 散り乱ひたる 岡びには うぐひす鳴くも 春かたまけて  巻5−838

春の野に 霧立ちわたり 降る雪と 人の見るまで 梅の花散る  巻5−839

春柳 かづらに折りし 梅の花 誰れか浮かべし 酒坏の上に  巻5−840

うぐひすの 音聞くなへに 梅の花 我家の園に 咲きて散るみゆ  巻5−841

我がやどの 梅の下枝に 遊びつつ うぐひす鳴くも 散らまく惜しみ  巻5−842

梅の花 折りかざしつつ 諸人の 遊ぶを見れば 都しぞ思ふ  巻5−843

妹が家に 雪かも降ると 見るまでに ここだもまがふ 梅の花かも  巻5−844

うぐひすの 待ちかてにせし 梅が花 散らずありこそ 思ふ子がため  巻5−845

霞立つ 長き春日を かざせれど いやなつかしき 梅の花かも  巻5−846

残りたる 雪に交れる 梅の花 早くな散りそ 雪は消ぬとも  巻5−849

雪の色を 奪ひて咲ける 梅の花 今盛りなり 見む人もがも  巻5−850

我がやどに 盛りに咲ける 梅の花 散るべくなりぬ 見む人もがも  巻5−851

梅の花 夢に語らく みやびたる 花と我れ思ふ 酒に浮かべこそ  巻5−852

後れ居て 長恋せずは 御園生の 梅の花にも ならましものを  巻5−864

梅柳 過ぐらく惜しみ 佐保の内に 遊びしことを 宮もとどろに  巻6−949

我がやどの 梅咲きたりと 告げ遣らば 来と言ふに似たり 散りぬともよし  巻6−1011

去年の春 いこじて植ゑし 我がやどの 若木の梅は 花咲きにけり  巻8−1423

我が背子が 見せむと思ひし 梅の花 それとも見えず 雪の降れれば  巻8−1426

霜雪も いまだ過ぎねば 思はぬに 春日の里に 梅の花見つ  巻8−1434

ふふめりと 言ひし梅が枝 今朝降りし 沫雪にあひて 咲きぬらむかも  巻8−1436

霞立つ 春日の里の 梅の花 山のあらしに 散りこすなゆめ  巻8−1437

霞立つ 春日の里の 梅の花 花に問はむと 我が思はなくに  巻8−1438

風交り 雪は降るとも 実にならぬ 我家の梅を 花に散らすな  巻8−1445

闇ならば うべも来まさじ 梅の花 咲ける 月夜に 出でまさじとや  巻8−1452

わが岡に 盛りに咲ける 梅の花 残れる雪を まがへつるかも  巻8−1640

沫雪に 降らえて咲ける 梅の花 君がり遣らば よそへてむかも  巻8−1641

たな霧らひ 雪も降らぬか 梅の花 咲かぬが代に そへてだに見む  巻8−1642

引き攀ぢて 折らば散るべみ 梅の花 袖に扱入れつ 染まば染むとも  巻8−1644

我がやどの 冬木の上に 降る雪を 梅の花かと うち見つるかも  巻8−1645

梅の花 枝にか散ると 見るまでに 風に乱れて 雪ぞ降り来る  巻8−1647

十二月には 沫雪降ると 知らねかも 梅の花咲く ふふめらずして  巻8−1648

今日降りし 雪に競ひて 我がやどの 冬木の梅は 花咲きにけり  巻8−1649

沫雪の このころ継ぎて かく降らば 梅の初花 散りか過ぎなむ  巻8−1651

梅の花 折りも折らずも 見つれども 今夜の花に なほしかずけり  巻8−1652

酒坏に 梅の花浮かべ 思ふどち 飲みての後は 散りぬともよし  巻8−1656

梅の花 散らすあらしの 音のみに 聞きし我妹を 見らくしよしも  巻8−1660

ひさかたの 月夜を清み 梅の花 心開けて 我が思へる君  巻8−1661

梅の花 咲ける岡辺に 家居れば 乏しくもあらず うぐひすの声  巻10−1820

梅の花 降り覆ふ雪を 包み持ち 君に見せむと 取れば消につつ  巻10−1833

梅の花 咲き散り過ぎぬ しかすがに 白雪庭に 降りしきりつつ  巻10−1834

梅が枝に 鳴きて移ろふ うぐひすの 羽白栲に 沫雪ぞ降る  巻10−1840

山高み 降り来る雪を 梅の花 散りかも来ると 思ひつるかも  巻10−1841

雪をおきて 梅をな恋ひそ あしひきの 山片付きて 家居せる君  巻10−1842

梅の花 取り持ち見れば 我がやどの 柳の眉し 思ほゆるかも  巻10−1853

うぐひすの 木伝ふ梅の うつろへば 桜の花の 時かたまけぬ  巻10−1854

我がかざす 柳の糸を 吹き乱る 風にか妹が 梅の散るらむ  巻10−1856

年のはに 梅は咲けども うつせみの 世の人我れし 春なかりけり  巻10−1857

うつたへに 鳥は食まねど 縄延へて 守らまく欲しき 梅の花かも  巻10−1858

馬並めて 多賀の山辺を 白栲に にほはしたるは 梅の花かも  巻10−1859

雪みれば いまだ冬なり しかすがに 春霞立ち 梅は散りつつ  巻10−1862

春されば 散らまく惜しき 梅の花 しましは咲かず ふふみてもがも  巻10−1871

いつしかも この夜の明けむ うぐひすの 木伝ひ散らず 梅の花見む  巻10−1873

ももしきの 大宮人は 暇あれや 梅をかざして ここに集へる  巻10−1883

梅の花 咲き散る園に 我れ行かむ 君が使を 片待ちがてり  巻10−1900

梅の花 しだり柳に 折り交へ 花に供へば 君に逢はむかも  巻10−1904

梅の花 我れは散らさじ あをによし 奈良なる人も 来つつ見るがね  巻10−1906

梅の花 散らす春雨 いたく降る 旅にや君が 盧りせるらむ  巻10−1918

梅の花 咲きて散りなば 我妹子を 来むか来じかと 我が松の木ぞ  巻10−1922

誰が園の 梅の花ぞも ひさかたの 清き月夜に ここだ散りくる  巻10−2325

梅の花 まづ咲く枝を 手折りてば つとと名付けて よそへてむかも  巻10−2326

誰が園の 梅にかありけむ ここだくも 咲きてあるかも 見が欲しまでに  巻10−2327

来て見べき 人もあらなくに 我家なる 梅の初花 散りぬともよし  巻10−2328

雪寒み 咲きには咲かぬ 梅の花 よしこのころは さてもあるがね  巻10−2329

妹がため ほつ枝の梅を 手折るとは 下枝の露に 濡れにけるかも  巻10−2330

咲き出照る 梅の下枝に 置く露の 消ぬべく妹に 恋ふるこのころ  巻10−2335

梅の花 それとも見えず 降る雪の いちしろけなむ 間使遣らば  巻10−2344

我がやどに 咲きたる梅を 月夜よみ 宵々見せむ 君をこそ待て  巻10−2349

み冬継ぎ 春は来れど 梅の花 君にしあらねば 招く人もなし  巻17−3901

梅の花 み山としみに ありともや かくのみ君は 見れど飽かにせむ  巻17−3902

春雨に 萌えし柳か 梅の花 ともに後れぬ 常の物かも  巻17−3903

梅の花 いつは折らじと いとはねど 咲きの盛りは 惜しきものなり  巻17−3904

遊ぶ内の 楽しき庭に 梅柳 折りかざしてば 思ひなみかも  巻17−3905

御園生の 百木の梅の 散る花し 天に飛び上り 雪と降りけむ  巻17−3906

梅の花 咲き散る園に 我れ行かむ 君が使を 片待ちがてら  巻18−4041

雪の上に 照れる月夜に 梅の花 折りて送らむ はしき子もがも  巻18−4134

春のうちに 楽しき終は 梅の花 手折り招きつつ 遊ぶにあるべし  巻19−4174

君が行き もし久にあらば 梅柳 誰れとともにか 我がかづらかむ  巻19−4238

春日野に 斎くみもろの 梅の花 栄えてあり待て 帰り来るまで  巻19−4241

袖垂れて いざ我が園に うぐひすの 木伝ひ散らす 梅の花見に  巻19−4277

あしひきの 山下ひかげ かづらける 上にやさらに 梅をしのはむ  巻19−4278

言繁み 相問はなくに 梅の花 雪にしをれて うつろはむかも  巻19−4282

梅の花 咲けるがなかに ふふめるは 恋か隠れる 雪を待つとか  巻19−4283

うぐひすの 鳴きし垣内に にほへりし 梅この雪に うつろふらむか  巻19−4287

恨めしく 君はもあるか やどの梅の 散り過ぐるまで 見しめずありける  巻20−4496

見むと言はば いなと言はめや 梅の花 散り過ぐるまで 君が来まさぬ  巻20−4497

梅の花 香をかぎはしみ 遠けども 心もしのに 君をしぞ思ふ  巻20−4500

梅の花 咲き散る春の 長き日を 見れども飽かぬ 磯にもあるかも  巻20−4502

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