やなぎ

うち上る 佐保の川原の 青柳は 今は春へと なりにけるかも  巻8−1433

シダレヤナギ

奈良時代に朝鮮を経て渡来したといわれる。

高さ10〜20bになり、細い枝がしだれるのが特徴。

3〜5月、葉より早くまたは同時に基部に3〜5個の小さな葉をつけた尾状花序をだす。

雄花序は長さ2〜4aで雌花序より大きい。

雄花の雄しべは2個で葯は黄色。

雌花の子房は狭卵形で花柱はごく短い。

雄花も雌花も苞は淡黄緑色で卵状楕円形。

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『万葉集』に詠まれた「やなぎ」は三十六首
梅の花 咲きたる園の 青柳は かづらにすべく なりにけらずや  巻5−817

青柳 梅との花を 折りかざし 飲みての後は 散りぬともよし  巻5−821

梅の花 咲きたる園の 青柳を かづらにしつつ 遊び暮らさな  巻5−825

うち靡く 春の柳と 我がやどの 梅の花とを いかにか分かむ  巻5−826

春柳 かづらに折りし 梅の花 誰れか浮かべし 酒坏の上に  巻5−840

梅柳 過ぐらく惜しみ 佐保の内に 遊びしことを 宮もとどろに  巻6−949

我が背子が 見らむ佐保道の 青柳を 手折りてだにも 見むよしもがも  巻8−1432

うち上る 佐保の川原の 青柳は 今は春へと なりにけるかも  巻8−1433

うち靡く 春立ちぬらし 我が門の 柳の末に うぐひす鳴きつ  巻10−1819

春霞 流るるなへに 青柳の 枝くひ持ちて うぐひす鳴くも  巻10−1821

霜枯れの 冬の柳は 見る人の かづらにすべく 萌えにけるかも  巻10−1846

浅緑 染め懸けたりと 見るまでに 春の柳は 萌えにけるかも  巻10−1847

朝な朝な 我が見る柳 うぐひすの 来居て鳴くべく 茂に早なれ  巻10−1850

青柳の 糸のくはしさ 春風に 乱れぬい間に 見せむ子もがも  巻10−1851

ももしきの 大宮人の かづらける しだり柳は 見れど飽かぬかも  巻10−1852

梅の花 取り持ち見れば 我がやどの 柳の眉し 思ほゆるかも  巻10−1853

我がかざす 柳の糸を 吹き乱る 風にか妹が 梅の散るらむ  巻10−1856

春されば しだり柳の とををにも 妹は心に 乗りにけるかも  巻10−1896

梅の花 しだり柳に 折り交へ 花に供へば 君に逢はむかも  巻10−1904

ますらをの 伏し居嘆きて 作りたる しだり柳の かづらせ我妹  巻110−1924

春柳 葛城山に 立つ雲の 立ちても居ても 妹をしぞ思ふ  巻10−2453

・・・ み雪降る 冬の朝は 刺し柳 根張り梓を 大御手に ・・・  巻13−3324

うらもなく 我が行く道に 青柳の 萌りて立てれば 物思ひ出つも  巻14−3443

恋しけば 来ませ我が背子 垣つ柳 末摘み枯らし 我れ立ち待たむ  巻14−3455

柳こそ 伐れば生えすれ 世の人の 恋に死なむを いかにせよとぞ  巻14−3491

小山田の 池の堤に さす柳 成りも成らずも 汝と二人はも  巻14−3492

青柳の 萌らろ川門に 汝を待つと 清水は汲まず 立ち処平すも  巻14−3546

青楊の 枝伐り下ろし ゆ種蒔き ゆゆしき君に 恋ひわたるかも  巻15−3603

春雨に 萌えし柳か 梅の花 ともに後れぬ 常の物かも  巻17−3903

遊ぶ内の 楽しき庭に 梅柳 折りかざしてば 思ひなみかも  巻17−3905

しなざかる 越の君らと かくしこそ 柳かづらき 楽しく遊ばめ  巻18−4071

春の日に 萌れる柳を 取り持ちて 見れば都の 大道し思ほゆ  巻19−4142

・・・ 青柳の 細き眉根を 笑み曲がり 朝影見つつ 娘子らが ・・・  巻19−4192

君が行き もし久にあらば 梅柳 誰れとともにか 我がかづらかむ  巻19−4238

青柳の ほつ枝攀ぢ取り かづらくは 君がやどにし 千年寿くとぞ  巻19−4289

我が門の 五本柳 いつもいつも 母が恋すす 業りましつしも  巻20−4386

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