酒落堂の記

山は静かにして性を養ひ、水は動いて情を慰す。静・動二つの間にして、住みかを得る者あり。

浜田氏珍夕といへり。目に佳境を尽し口に風雅を唱へて、濁りを澄まし塵を洗ふがゆゑに、酒落

堂といふ。門に戒幡を掛けて、「分別の門内に入ることを許さず」と書けり。かの宗鑑が客に教ゆ

る戯れ歌に、一等加へてをかし。且つそれ簡にして方丈なるもの二間、休・紹二子の侘びを次ぎ

て、しかもその矩を見ず。木を植ゑ、石を並べて、かりのたはぶれとなす。そもそも、おものの浦

は、瀬田・唐崎を左右の袖のごとくし、湖をいだきて三上山に向ふ。湖は琵琶の形に似たれば、

松のひびき波をしらぶ。比叡の山、比良の高根をななめに見て、音羽・石山を肩のあたりになむ

置けり。長等の花を髪にかざして、鏡山は月を粧ふ。淡粧濃抹の日々に変れるがごとし。心匠の

風雲も、またこれに習ふなるべし。                                    .

                                                    ばせを

四方より花吹き入れて鳰の波

大津市秋葉台 茶臼山公園

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近江の芭蕉 句碑を訪ねる 茶臼山公園

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万葉集を携えて

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