石馬寺
東近江市五個荘石馬寺町
 
 

久しぶりに青空の休日だ。白洲正子の「かくれ里」を思い出し、五個荘に向った。国道8号線を西に入り、繖山(キヌガサヤマ)の近くまで来ると、左観音正寺・右石馬寺の標識がある。
石馬寺は山麓にあった。車を止めた空地のすぐ横に「石馬の池」と石碑が立っている。池には「駿馬化石」ともある。この石馬寺は、聖徳太子の創建と伝わり、この地まで来た太子の馬は、疲弊で死んでしまったという。そしてその馬は石となり、今もこの池に石馬として形を留めるという。寺の名前もこれに由来する。確かに、白い長方の石が池面に沈んでいる。

苔生す階段を登ると右に石馬寺、左は六所神社、前方奥には龍神社の鳥居が見える。ふと足が止まった。この光景には覚えがあった。あの龍神社の社殿を目指してGoo(愛犬)と長い階段を頂上まで登った記憶が戻った。飲物も持たず疲労困憊の参拝であったことを。

石馬寺は、白洲さんによれば茅葺き屋根の本堂とその趣を賞賛されていたが、残念ながら今日の本殿は瓦葺となり、コンクリート造りの宝物殿となりその趣はちょっとがっかりさせる造作になっていた。とはいえ、私たちを他に訪ねる人もなく静寂としていて、名残のやぶ椿がぽとりと落ちる、その音さえも聞こえるようである。
宝物殿には重要文化財指定の像が数多く並ぶ。阿弥陀如来像、四天王像、牛にまたがる大威徳明像、さらには十一面観音像そして役行者像である。藤原期の彫刻とあるが、いずれもがすばらしく感銘受ける像である。
宝物の絵葉書を買い求め、外に出た。垣根に沿って馬酔木の花が咲き始めている。白い茶花のような椿が咲いている。春間近を思わせる石馬寺であった。苔を張る石段に足を滑らせ転んでしまったのはGooの所為だ。

阿弥陀如来十一面観音菩薩十一面観音菩薩
大威徳明王多聞天広目天
役行者と前鬼・後鬼

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万葉集を携えて

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