教林坊

滋賀県近江八幡市安土町石寺

 

白洲正子『かくれ里』の「山の寺」に、

麓の石寺という部落は、世捨人のような風情のある村で、かつては観音正寺の末寺が三十以上もあり、繁栄を極めたというが、現在は教林坊という、ささやかな寺が一つ残っているだけである。山裾のせまい道を、右へ行くと、ほどなくその坊に着く。椿が多い所で、落椿を踏みながら登る石段のあたりは趣が深い。入ってすぐの所は、室町時代の庭園で、大分荒れているが、南の方の山が借景になって、小さいながらまとまっている。借景というのは、単なる造園技術のように思われているが、やはり山の信仰が元になったに違いない。・・・ここで私の興味をひいたのは、もう一つの慶長時代の石庭で、これを中心の庭になっているのだが、いきなり山へつづく急勾配に作ってあり、よく見ると、それは古墳を利用してあるのだった。横の方に、羨道も現れている。その石室の巨大な蓋石を、そのまま庭石に使ってあるのだが、不自然ではなく、日本の造園の生い立ちといったようなものを見せられたような感じがする。古墳をとり入れた庭なんて、今まで聞いたこともないが、それは気がつかないだけのことで、案外たくさんあるのかも知れない。・・・

参道 落ち椿を踏みながら、白洲正子と同じ参道を歩む。

本堂 本尊は石室に坐す。本堂には本尊御前立の観音が坐す。

庭園 小堀遠州の作といわれる。

    竹筒に耳を添えると、水琴窟の音色が聴こえる。


室町時代の庭園

水琴窟

太子の説法岩

茶席 茶道裏千家流 西川社中

 

語り 語り・今井友子さん  能管・野中久美子さん

・・・・・ つらつきいとらうたげにて、眉のわたりうちけぶり、いはけなくかいやりたる額つき、髪ざし、いみじううつくし。ねびゆかむさまゆかしき人かなと、目とまりたまふ。さるは、限りなう心を尽くしきこゆる人に、いとよう似たてまつれるが、まもらるるなりけり、と思ふにも涙ぞ落つる。 ・・・・・(『源氏物語』 若紫の巻)

帰りの参道

紅葉の美しい坊という。秋にはもう一度訪ねてみたい。

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万葉集を携えて

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