玉姫物語
長浜市木之本町千田
むかし、千田は石作りの庄と呼ばれていました。
この里に、そうざえもんという人が住んでおりました。
そうざえもんさんには、名を玉姫という、それは美しい娘がありました。
そして、このことをどこから伝え聞いたのか、伊吹の山に住む伊吹の三郎という男が、
この娘をひと目みたいと里へやってきました。
伊吹の三郎は、大変な怪力をもった大男でした。その上、里をあらしまわり、人々から大層恐れられていました。
三郎は、草屋根の下で無心に玉を磨いている玉姫の姿にひと目ぼれしてしまいました。
そして、さっそく「娘をわしにくれ」とそうざえもんさんに頼みました。
そうざえもんさんは、「嫁にはやれぬ」と恐る恐る、でも、きっぱりとことわりました。
怒った三郎は、伊吹の山の岩石を石作りの庄めがけて投げつけました。
投げつけた石は、その里の岩田という田に落ちました。
今も、その石が、千田のお宮さんにまつられており、
伊吹の三郎の手の跡が残っているのが見られるということです。
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お宮さんにまつられた石
そういわれて見ると、親指が上で、向って左横に、指が4本、ぐっと石を握っているみたい。
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そのお宮さんは、千田の「石作神社・玉作神社」。
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この伊吹山の三郎って、ほんとはいいヤツだったんじゃないかなぁ。
ちょっと気が弱くて、玉姫欲しいって思い切って云ったけど、そうざえもんさんに「あかん」と断られてしまった。
くやしくって、泣いてしまって、そばにあった石ころを田んぼ目がけて投げた。だあれも怪我などしてないし、
もともとあばれんぼで、村を荒らしたというけれど、
家を壊したとか、橋を壊したとか、田んぼの畔を壊したとか、そんな村人に迷惑かけるようなことではなく、
畑にできている瓜や胡瓜をかじって食べたとか、柿をもいで食べたとか、悪がきのいたずらのようなもので、
三郎はほんとはいいヤツだった。
だから、そうざえもんさんに断られて、おとなしく伊吹山に帰った。
そうざえもんさんをぶん殴ったわけでもないし、玉姫を強引に連れ去ったわけでもない。
三郎はきっといいヤツだった。
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それから3年の日が過ぎたある日、
玉姫は大きなおにぎりをいっぱい作って、玉子焼きとウィンナのおかずも入れたお弁当を持って
伊吹山に向かった。
ふたりはしあわせな夫婦になったし、そのまた1年後、そうざえもんさんはかわいい孫を抱いていた。
そんな「続・玉姫物語」を私は描いているのだけれど・・・。
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