あし

葦辺行く 鴨の羽がひに 霜降りて 寒き夕は 大和し思ほゆ  巻1−64

私の住む近江、琵琶湖では湖岸沿いであちこち「あし」を見ることができる。

琵琶湖に外来の魚のブルーギルやブラックバスが大いに繁殖し、在来魚のフナやモロコが減りつつある。

その在来魚を守るためもこのアシの群生を守ろうとしている。

産卵の場所を与え、またブラックバスから幼魚を守るのがアシの役割という。

アシは悪しに通ずるとして、「ヨシ(良し)」とも呼ばれる。

琵琶湖古来の生物体系を是非守りたいものだ。

私たちの食文化にも琵琶湖の影響は大きく、私も子どものころからアユ・モロコ・フナ・コイなどに親しんできた。

フナ寿しなどは最高の珍味だ。

是非、「琵琶湖・良し(ヨシ)」に戻ってほしいものだ。

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『万葉集』に詠まれた「あし」は四十九首

葦辺行く 鴨の羽がひに 霜降りて 寒き夕は 大和し思ほゆ  巻1−64

我が聞きし 耳によく似る 葦の末の 足ひく我が背 つとめ給ぶべし  巻2−128

・・・ 葦原の 瑞穂の国を 天地の 寄り合ひの極み 知らしめす 神の命と ・・・  巻2−167

葦辺には 鶴がね鳴きて 湖風 寒く吹くらむ 津乎の崎はも  巻3−352

草香江の 入江にあさる 葦鶴の あなたづたづし 友なしにして  巻4−575

若の浦に 潮満ち来れば 潟をなみ 葦辺をさして 鶴鳴き渡る  巻6−919

おしてる 難波の国は 葦垣の 古りにし里と 人皆の ・・・  巻6−928

湯の原に 鳴く葦鶴は 我がごとく 妹に恋ふれや 時わかず鳴く  巻6−961

・・・ 浦洲には 千鳥妻呼び 葦辺には 鶴が音響む 見る人の ・・・  巻6−1062

潮干れば 葦辺に騒く 白鶴の 妻呼ぶ声は 宮もとどろに  巻6−1064

港の 葦の末葉を 誰れか手折りし 我が背子が 振る手を見むと 我れぞ手折りし  巻7−1288

葦の根の ねもころ思ひて 結びてし 玉の緒といはば 人解かめやも  巻7−1324

・・ 葦原の 瑞穂の国に 家なみや また帰り来ぬ 遠つ国 ・・・  巻9−1804

葦辺なる 荻の葉さやぎ 秋風の 吹き来るなへに 雁鳴き渡る  巻10−2134

おしてる 難波堀江の 葦辺には 雁寝たるかも 霜の降らくに  巻10−2135

港葦に 交れる草の しり草の 人皆知りぬ 我が下思ひは  巻11−2468

花ぐはし 葦垣越しに ただ一目 相見し子ゆゑ 千たび嘆きつ  巻11−2565

人間守り 葦垣越しに 我妹子を 相見しからに 言ぞさだ多き  巻11−2576

難波人 葦火焚く屋の 煤してあれど おのが妻こそ 常めづらしき  巻11−2651

港入りの 葦別け小舟 障り多み 我が思ふ君に 逢はぬころかも  巻11−2745

大船に 葦荷刈り積み しみみにも 妹は心に 乗りにけるかも  巻11−2748

葦垣の 中のにこ草 にこよかに 我れと笑まして 人に知らゆな  巻11−2762

葦鶴の 騒く入江の 白管の 知らせむためと 言痛かるかも  巻11−2768

葦鴨の すだく池水 溢るとも 設溝の辺に 我れ越えめやも  巻11−2833

港入りの 葦別け小舟 障り多み 今来む我れを 淀むと思ふな  巻12−2998

葦辺行く 鴨の羽音の 音のみに 聞きつつもとな 恋ひわたるかも  巻12−3090

葦原の 瑞穂の国に 手向けすと 天降りましけむ 五百万 千万神の ・・・  巻13−3227

葦原の 瑞穂の国は 神ながら 言挙げせぬ国 しかれども ・・・  巻13−3253

・・・ 天雲の ゆくらゆくらに 葦垣の 思ひ乱れて 乱れ麻の ・・・  巻13−3272

葦垣の 末かき別けて 君越ゆと 人にな告げそ 事はたな知れ  巻13−3279

葦辺行く 雁の翼を 見るごとに 君が帯ばしし 投矢し思ほゆ  巻13−3345

港の 葦が中なる 玉小菅 刈り来我が背子 床の隔しに  巻14−3445

妹なろが 付かふ川津の ささら荻 葦と人言 語りよらしも  巻14−3446

葦の葉に 夕霧立ちて 鴨が音の 寒き夕し 汝をば偲はむ  巻14−3570

夕されば 葦辺に騒き 明け来れば 沖になづさふ 鴨すらも 妻とたぐひて ・・・  巻15−3625

鶴が鳴き 葦辺をさして 飛び渡る あなたづたづし ひとりさ寝れば  巻15−3626

・・・ 暁の 潮満ち来れば 葦辺には 鶴鳴き渡る 朝なぎに 船出をせむと ・・・  巻15−3627

我が背子に 恋ひすべながり 葦垣の 外に嘆かふ 我れし悲しも  巻17−3975

葦垣の 外にも君が 寄り立たし 恋ひけれこそば 夢に見えけれ  巻17−3977

・・・  渚には 葦鴨騒き  さざれ波 立ちても居ても  漕ぎ廻り ・・・  巻17−3993

・・・ 妻呼ぶと 渚鳥は騒く 葦刈ると 海人の小舟は 入江漕ぐ ・・・  巻17−4006

葦原の 瑞穂の国を 天下り 知らしめしける すめろきの 神の命の ・・・  巻18−4094

・・・ あらたまの 月日数みつつ 葦が散る 難波の御津に 大船に ・・・  巻20−4331

葦垣の 隈処に立ちて 我妹子が 袖もしほほに 泣きしぞ思はゆ  巻20−4357

海原の ゆたけき見つつ 葦が散る 難波に年は 経ぬべく思ほゆ  巻20−4362

・・・ 葦が散る 難波に来居て 夕潮に 船を浮け据ゑ 朝なぎに ・・・  巻20−4398

家思ふと 寐を寝ず居れば 鶴が鳴く 葦辺も見えず 春の霞に  巻20−4400

家ろには 葦火焚けども 住みよけを 筑紫に至りて 恋しけ思はも  巻20−4419

葦刈りに 堀江漕ぐなる 楫の音は 大宮人の 皆聞くまでに  巻20−4459

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