泊瀬の山 泊瀬川

奈良県桜井市初瀬

土形娘子を泊瀬の山に火葬る時に、柿本朝臣人麻呂が作る歌一首

こもりくの 泊瀬の山の 山の際に いさよふ雲は 妹にかもあらむ  巻3−428

・・・

泊瀬川 早み早瀬を むすび上げて 飽かずや妹と 問ひし君はも  巻11−2706

大神神社のある三輪から東に道をとると泊瀬(現在は初瀬)に至る。

牡丹で有名な長谷寺があるところだ。

狭い峡谷を通るこの道は昔から伊賀、伊勢に向う街道筋にあたる。

現在でも、ちょっと道をそれると静かな田園風景が広がるが、歌にもあるようにこの辺は万葉当時、埋葬地でもあったようだ。

泊瀬の枕詞は隠口(こもりく)、葬送の入口というイメージだ。

泊瀬川といっても小さな川である。ちょっと下流の三輪辺りでは三輪川とも呼んだ。

・・・

だけど、泊瀬は雄略天皇の泊瀬朝倉宮があった地でもあり、葬送の地だけではなく、それなりの集落もあった。

こんな歌もある。

・・・

柿本朝臣人麻呂が集の歌

こもりくの 泊瀬小国に よばひせす 我がすめろきよ 奥床に 母は寐ねたり 外床に 父は寐ねたり 

起き立てば 母は知りぬべし 出でて行かば 父知りぬべし ぬばたまの 夜は明けゆきぬ ここだくも 思ふごとならぬ 隠り妻かも

巻13−3312

・・・

すめろき(天皇)も当時は夜這いするんですね、こっそり泊瀬に隠し妻を持っていて。

その妻に代って人麻呂が詠む歌は、

・・・

わたしの部屋の奥にはかあちゃんが寝ています。入口近くではとおちゃんが寝ています。

あなたが外で待っていてくださるのは分ってるんですけど、

わたしがごそごそと動いたら、かあちゃんが目を覚ますでしょうし、

こっそり出ていこうとしても、とおちゃんが気づくでしょうし、

はやく行動しないと夜が明けてしまう、どうしょう・・・、どうしたらいいの・・・。

あなたに逢いたい。

← 次ぎへ      次ぎへ →

故地一覧へ

万葉集 万葉故地 泊瀬(初瀬)

万葉集を携えて

inserted by FC2 system