くず

ま葛延ふ 夏野の繁く かく恋ひば まこと我が命 常ならめやも  巻10−1985

クズ

マメ科クズ属

山野のいたくところに見られる大形のつる状草本で、茎の基部は木質となる。

根は太く大きく、多量のでんぷんを含んでおり、葛粉が取れる。

花は紅紫色で、花期は7〜9月。

和名は大和の国栖(くず)が葛粉の産地であったことに由来する。

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野原や川原などいたるところに這え伸びて、地域の草刈りの日にはうんざりするクズですけど、

万葉の花だから許してやろうといつも思っています。

この花の根から「吉野クズ」のような美味なものが取れるとは想像つきませんね。

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『万葉集』に詠まれた「くず」は十八首

・・・ 延ふ葛の いや遠長く 万代に 絶えじと思ひて 通ひけむ ・・・  巻3−423

夏葛の 絶えぬ使の よどめれば 事しもあるごと 思ひつるかも  巻4−649

ま葛延ふ 春日の山は うち靡く 春さりゆくと 山峡に ・・・  巻6−948

大刀の後 鞘に入野に 葛引く我妹 真袖もち 着せてむとかも 夏草刈るも  巻7−1272

をみなへし 佐紀沢の辺の 真葛原 いつかも繰りて 我が衣に着む  巻7−1346

萩の花 尾花葛花 なでしこの花 をみなへし また藤袴 朝顔の花  巻8−1538

ま葛延ふ 夏野の繁く かく恋ひば まこと我が命 常ならめやも  巻10−1985

真葛原 靡く秋風 吹くごとに 阿太の大野の 萩の花散る  巻10−2096

雁がねの 寒く鳴きしゆ 水茎の 岡の葛葉は 色づきにけり  巻10−2208

我がやどの 葛葉日に異に 色づきぬ 来まさぬ君は 何心ぞも  巻10−2295

ま葛延ふ 小野の浅茅を 心ゆも 人引かめやも 我がなけなくに  巻11−2835

水茎の 岡の葛葉を 吹きかへし 面知る子らが 見えぬころかも  巻12−3068

赤駒の い行きはばかる 真葛原 何の伝て言 直にしよけむ  巻12−3069

大崎の 荒磯の渡り 延ふ葛の ゆくへもなくや 恋ひわたりなむ  巻12−3072

上つ毛野 久路保の嶺ろの 葛葉がた 愛しけ子らに いや離り来も  巻14−3412

梨棗 黍に粟つぎ 延ふ葛の 後も逢はむと 葵花咲く  巻16−3834

高円の 野辺延ふ葛の 末つひに 千代に忘れむ 我が大君かも  巻20−4508

延ふ葛の 絶えず偲はむ 大君の 見しし野辺には 標結ふべしも  巻20−4509

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