はねず

思はじと 言ひてしものを はねず色の うつろひやすき 我が心かも  巻4−657

ニワウメ

バラ科サクラ属落葉低木。

中国から古い時代に渡来した。

4月頃、葉より早く、または同時に直径1.3aで淡紅色または白色の花が枝に多数咲く。

「はねず色の」は「うつろひやすき」の枕詞、はねずの染色はあせやすいことをいうのだろう。

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静岡県浜北市の万葉の森公園で撮ったものです。

周りの木々がまだ冬枯れなのにいち早く花を開いたこのニワウメを見ますと、

「夏まけて」と大伴家持は詠みましたが、

私には「春まけて」と思えます。

万葉人との季節感の違いでしょうか。

夏まけて 咲きたるはねず ひさかたの 雨うち降らば うつろひなむか  巻8−1485

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はねずはザクロのことともいわれます。

ザクロ

ザクロ科ザクロ属落葉小高木。

6月頃、直径役5aの朱赤色の花を開く。

花弁は7個で、薄くてしわがある。

果実は球形で先端に萼片が残る。

果皮は厚く、熟すと不規則に裂け、淡紅色の種子が現れる。食べられる。

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子供のころ、母の実家にザクロの木がありました。

熟した果実は赤い種子がこぼれるばかりに裂け、美味しそうに見えたものです。

木によじ登り、口にほおばったその甘さ、酸っぱさ、遠い昔のことになってしまいました。

でも、空腹を満たすような果実ではなかったですね。

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『万葉集』に詠まれた「はねず」は四首

思はじと 言ひてしものを はねず色の うつろひやすき 我が心かも  巻4−657

夏まけて 咲きたるはねず ひさかたの 雨うち降らば うつろひなむか  巻8−1485

山吹の にほえる妹が はねず色の 赤裳の姿 夢に見えつつ  巻11−2786

はねず色の うつろひやすき 心あらば 年をぞ来経る 言は絶えずて  巻12−3074

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