うのはな

ほととぎす 鳴く声聞くや 卯の花の 咲き散る岡に 葛引く娘子  巻10−1942

ウツギ

ユキノシタ科ウツギ属

5月下旬から7月にかけて、円錐花序を多数だし、直径1〜1.5aの白い花が密に垂れ下がって咲く。

花弁は5個、雄しべは10個、花糸には狭い翼がある。

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ウツギには、ヒメウツギ、マルバウツギ、サラサウツギ、ウラジロウツギ、バイカウツギなど種類が多く、ホトトギスも迷う。

私の近くでは比良山系、鈴鹿山系の山野でよく見かけるが、

特に鈴鹿山系の滋賀・信楽から三重・阿山への山道は見事なウツギがいっぱいに咲いていた。

ウツギには、科・属の違うウツギもあって、さらにややこしい。万葉に詠われた卯の花はユキノシタ科ウツギ属だろうね、きっと。

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ハコネウツギ(スイカズラ科タニウツギ属)

ベニバナニシキウツギ(スイカズラ科タニウツギ属)

タニウツギ(スイカズラ科タニウツギ属)

ツクバネウツギ(スイカズラ科ツクバネウツギ属)

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『万葉集』に詠まれた「うのはな」は二十四首
 
佐伯山 卯の花持ちし 愛しきが 手をし取りてば 花は散るとも  巻7−1259

ほととぎす 来鳴き響もす 卯の花の 伴にや来しと 問はましものを  巻8−1472

卯の花も いまだ咲かねば ほととぎす 佐保の山辺に 来鳴き響もす  巻8−1477

皆人の 待ちし卯の花 散りぬとも 鳴くほととぎす 我れ忘れめや  巻8−1482

卯の花の 過ぎば惜しみか ほととぎす 雨間も置かず こゆ鳴き渡る  巻8−1491

ほととぎす 鳴く峰の上の 卯の花の 憂きことあれや 君が来まさぬ  巻8−1501

・・・ 卯の花の 咲きたる野辺ゆ 飛び翔り 来鳴き響もし 橘の ・・・  巻9−1755

春されば 卯の花ぐたし 我が越えし 妹が垣間は 荒れにけるかも  巻10−1899

ほととぎす 鳴く声聞くや 卯の花の 咲き散る岡に 葛引く娘子  巻10−1942

朝霧の 八重山越えて ほととぎす 卯の花辺から 鳴きて越え来ぬ  巻10−1945

五月山 卯の花月夜 ほととぎす 聞けども飽かず また鳴かぬかも  巻10−1953

卯の花の 散らまく惜しみ ほととぎす 野に出で山に入り 来鳴き響もす  巻10−1957

かくばかり 雨の降らくに ほととぎす 卯の花山に 名ほか鳴くらむ  巻10−1963

時ならず 玉をぞ貫ける 卯の花の 五月を待たば 久しかるべみ  巻10−1975

卯の花の 咲き散る岡ゆ ほととぎす 鳴きてさ渡る 君は聞きつや  巻10−1976

うぐひすの 通ふ垣根の 卯の花の 憂きことあれや 君が来まさぬ  巻10−1988

卯の花の 咲くとはなしに ある人に 恋ひやわたらむ 片思にして  巻10−1989

・・・ 卯の花の にほへる山を よそのみも 振り放け見つつ 近江道に ・・・  巻17−3978

藤波は 咲きて散りにき 卯の花は 今ぞ盛りと あしひきの ・・・  巻17−3993

・・・ 見わたせば 卯の花山の ほととぎす 音のみし泣かゆ 朝霧の ・・・  巻17−4008

卯の花の 咲く月立ちぬ ほととぎす 来鳴き響めよ ふふみたりとも  巻18−4066

・・・ 別きてしのはむ 卯の花の 咲く月立てば めづらしく 鳴くほととぎす ・・・  巻18−4089

卯の花の ともにし鳴けば ほととぎす いやめづらしも 名告り鳴くなへ  巻18−4091

卯の花を 腐す長雨の 水始に 寄る木屑なす 寄らむ子もがも  巻19−4217

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