猿沢池  采女神社

奈良市樽井町

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我妹子が 寝くたれ髪を 猿沢の 池の玉藻と 見るぞ悲しき  拾遺集 柿本人麻呂

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池傍にある石碑は次のように紹介する。

「悲恋の采女と衣掛柳の伝説」

『昔平城の帝に仕う奉る采女あり、顔かたちいみじう清らにて人々よばひ、殿上人などもよばひけどあはざりけり。

そのあはぬ心は帝を限りなくめでたきものになん思ひ奉りける・・・云々』(大和物語より)

しかし常なきものは男女の仲、やがて帝の寵愛の衰えたことを嘆いて采女は身を投げてしまいました。

そのとき衣を掛けたのが衣掛柳といわれています。

それを不びんに思われた帝が采女の霊を慰められたのが、池の北西の采女神社です。

采女の古里福島県郡山市にも采女の霊を祀る采女神社があります。

采女神社

猿沢池の傍にある采女神社、社殿が鳥居に背を向けている。

身を投げた池を見るのは忍びないと、一夜で社殿が池に背を向けたという。

『枕草子』第三十五段に、

猿沢の池は、采女の身投げたるをきこしめして、行幸などありけむこそ、いみじうめでたけれ。

「寝くたれ髪を」と、人麿が詠みけむほどなど思ふに、いふもおろかなり。

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秋晴れの爽やかな日、仕事で奈良市内を訪ねた。

商談を終え、あまりに気持ちのいい日和なので、仲間とふたり、商店街をぶらぶらしながら「開化天皇陵」とこの「猿沢池」を訪ねた。

途中で、オータムジャンボ宝くじを買ったりしながら。

猿沢池は深緑色に濁っていて、お世辞にもきれいな水面とは云えないけれど、

爽やかな風に水面は揺らぎ、興福寺の五重塔の影も揺らぐ。

池面に枝を広げる柳の木が、采女の悲恋の物語を語っているようだ。

水辺にはたくさんの亀が泳ぎ、あるいは甲羅干しをしている、長閑な昼下がりである。

猿沢池は万葉集には登場しないけれど、

以前訪ねた万葉故地「安積山で紹介した福島県郡山市の采女神社のことと関連してここに載せた。

安積采女の由来もお読みいただきたい。

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